ノンファーム型接続とは?
「ノンファーム型接続」とは、送電網(系統)の空き容量があるときにのみ電力を送ることが許可される接続方式です。
系統が混雑した際には出力を制限されることが前提となっており、従来の「ファーム型接続」とは大きく考え方が異なります。
この方式は主に再生可能エネルギー(太陽光・風力など)の普及を加速させるために導入されました。限られた送電インフラを最大限に活用することが目的です。
系統用蓄電池ビジネスも、基本的には「ノンファーム型接続」で行われるケースが多いです。
ファーム型接続との違いは?

従来のファーム型接続では、発電事業者が送電網の容量を“確保”し、安定して電力を送ることができます。系統が混雑していても出力制御されることは基本的にありません。
一方で、ノンファーム型接続は、空いているときだけ送れる「余った枠」を使うようなイメージです。混雑時には出力を制御される可能性があり、電力を常時安定的に送ることが保証されていません。
項目 | ファーム型 | ノンファーム型 |
---|---|---|
容量保証 | あり | なし |
出力制御 | 原則なし | あり(無補償) |
接続までの時間 | 長い(増強が必要な場合あり) | 比較的早い |
コスト(工事負担金等) | 系統増強費用あり | 費用低め |
ノンファーム型接続が適用されるタイミング
事前検討・費用発生のポイント・接続判断まで

再エネや蓄電池プロジェクトの計画を立てる際、「この案件はノンファーム型になるのか?」は、
事業リスクや収益性に直結する非常に重要な判断ポイントです。
では、「ノンファーム型接続になる」とわかるのはいつなのでしょうか?
また、22万円の調査費はいつ発生するのか?
事前検討フェーズ:予測レベルで判断できるか?
この段階では、事業者自身が設置候補地を選定し、送電網の混雑状況などを調べる段階です。
この時点で「ノンファーム型になる」と正確にはまだ分かりませんが、予測は可能です。
事前に確認すべきポイント
チェック項目 | 内容 | 情報入手先 |
---|---|---|
空き容量の有無 | 接続希望エリアの送電網が混雑していないか | 各送配電事業者HP(混雑マップ) |
マスタープラン | 今後の送電網の増強予定があるか | 経産省、電力広域的運営推進機関 |
ノンファーム対象実績 | 同エリアで過去にノンファーム型で接続された案件はあるか | FIT認定情報、RE100参加企業 |
これらの情報から「ノンファーム型になる可能性が高いか低いか」を予測することはできますが、
正式な判断は送配電事業者の接続検討を経なければ下されません。
空き容量の有無
下記ブログに各送配電事業者のホームーページを追加しています。

マスタープラン(地域系統整備マスタープラン)
日本全国の電力系統(送電網)において、どこでどのように送電設備を増強するべきかを中長期的に計画した“道しるべ”です。
ノンファーム対象実績など
下記のようなRE100参加企業のプレスリリースからヒントを得ることが可能です。
現実的には、スピード重視が求めれておりますので、高圧レベルは「空き容量の有無」を確認し、事前申し込みを行われていることが多いです。
接続検討申込み:ここで22万円の調査費が発生!
事業者が所定の申込書を提出して「この地点で接続できるか、正式に調べてほしい」と依頼するフェーズです。
この時点で、22万円(標準)の接続検討費用が発生します。
この支払いをもって「事業を本気で検討している」と送配電側に伝えるサインとなります。
空き容量・混雑状況の調査(送配電事業者による)
申込み後、送配電事業者側で以下のような技術的な検討が行われます:
- 現在の空き容量の有無(リアルタイム)
- 周辺系統への既存接続との関係
- 系統混雑のリスク評価
- 必要に応じて送電線や変電設備の増強要否の検討
ここで初めて、「空き容量があるか」「系統増強が必要か」「ノンファーム案が妥当か」といった技術判断が下されていきます。
接続方式が明記される「接続結果の回答書」
調査結果をもとに、送配電事業者から以下のいずれかの提案が行われます。
接続方式 | 提案される条件 |
---|---|
ファーム型接続 | 空き容量があり、接続が可能 |
ファーム型+系統増強 | 増強すれば接続可。ただし費用が大きい |
ノンファーム型接続 | 空き容量なし・増強困難 → 出力制御付き接続 |
この時点で、ノンファーム型になる可能性が初めて具体的に示されるのです。事業者としては、接続検討を申し込む段階で「ノンファーム型になる可能性」を見越して準備しておくことが非常に重要です。
ファーム型接続が難しいので、ノンファーム型接続でしたら可能ですと言った回答が送配電事業者からきます。
送配電事業者から「接続検討回答者」が送られてきます。
ここには接続可能条件・接続方式・出力制御の前提などが明記されており、以下のようなニュアンスの文言が入っていれば「ノンファーム型であることが」*確定*します:
「空き容量が不足しているため、ノンファーム型接続でのご提案となります。」
「出力制御が発生する可能性がありますので、接続後も一定の制御をご了承いただく必要があります。」
この「回答書を受領した瞬間」が、プロジェクトがノンファーム型接続となることが公式に判明するタイミングです。
この接続検討の回答書には、他にも「工事負担金」、「連系日(開始予定日」」なども明記されます。
出力制御のリスクとメリット・デメリット
メリット
- 早く接続できる:送電設備の工期の見通しが立てられる
- 初期コストが抑えられる:増強費用の負担が抑えることができる
- 再エネ導入の柔軟性が高まる:分散型電源にも向いている
デメリット
- 出力制御リスクがある:収益が不安定になる可能性がある
- 売電量が読めない:出力制御の頻度や時間が不確定
- 補償がない:出力を止められても、損害補償は基本的にない
例:ある太陽光発電所では、年間で14%以上の出力制御が発生するエリアもあるという報告もあります。
出力制御の頻度はエリアによって異なるため、事前に地域の混雑状況を把握しておくことが不可欠です。
制度改定と蓄電池付きの再エネの普及により、安定した電力網が築けます。
まとめ:ノンファーム型接続を理解して、戦略的に動こう

ノンファーム型接続は、系統の限られた資源を最大限に活かす有効な仕組みです。
事業者としては、以下のポイントを抑えましょう:
- 接続検討の申し込み段階で「ノンファーム型」の可能性を想定しておく
- 時間があれば、地域ごとの送電混雑状況やマスタープランを事前に調査する
- 出力制御のリスクと向き合い、事業収益性をしっかり見極める