出力制御の話になると、こんな認識が今でも根強く残っています。
- 「出力制御はFITの問題でしょう?」
- 「ノンフィットやPPAなら関係ないですよね?」
- 「市場連動なら、止められても自己責任なだけでは?」
結論から言うと、これらはすべて不正確です。
出力制御は、FITかどうかで決まる制度ではありません。
この記事では、FIT・FIP・ノンフィット・PPAといった契約形態を横断して、
「どの案件に、なぜ出力制御が適用されるのか」を整理します。
よくある誤解

出力制御は「FITのペナルティ」ではない
出力制御という言葉のせいで、
FITだから止められる、FITじゃなければ自由に発電できる
と理解されがちですが、これは制度の構造を取り違えています。
出力制御は、
- FITの罰則
- 再エネ優遇の代償
ではありません。電力系統を守るための「需給調整ルール」です。
基本整理:出力制御は「系統につながる案件」すべてが対象
最初に一番大事な整理をします。
出力制御が適用されるかどうかを決めているのは、
FIT・FIP・PPAといった制度ではありません。
決めているのは、その発電所が電力系統にどう接続されているかです。
つまり、
- 系統に連系している
- 電力会社(一般送配電事業者)の設備を使っている
この条件を満たす限り、原則として出力制御の対象になり得ます。
FIT案件の場合

まず、最も分かりやすいFIT案件です。
FITでは、
- 発電した電気を
- 国が定めた価格で
- 一定期間
- 電力会社が買い取る
という仕組みになっています。
ただし、
「どんな状況でも全量を必ず買い取る」
とは、制度上も契約上も書かれていません。
FIT案件であっても、
- 系統の需給バランスが崩れる場合
- 安全運用が難しい場合
には、出力制御は普通に行われます。
30日/360時間/無制限といったルールが問題になるのは、
まさにこのFIT案件が中心です。
FIP案件の場合
FIPになると、
- 売電先は市場(JEPXなど)
- 価格は市場連動
- プレミアムが上乗せされる
という形になります。ここでよくある誤解が、
市場で売っているのだから、出力制御は市場の問題では?
という考え方です。
しかし実際には、
- 市場に出す前に
- 物理的に発電を止められれば
- そもそも売る電気が存在しない
という話になります。
FIPであっても、系統につながっている以上、出力制御は適用されます。
違うのは、
- FIT:売電収入が減る
- FIP:市場売上+プレミアムが減る
というお金の見え方だけです。
ノンフィット案件の場合

「ノンフィットなら自由」というイメージも、実務では当てはまりません。
ノンフィットであっても、
- 系統に売電している
- 系統連系設備を使っている
以上、出力制御の対象になります。
FITが終わってノンフィットに移行した案件でも、
FITが終わった瞬間に出力制御がなくなる
ということはありません。
出力制御は、売電制度とは独立した、系統ルールだからです。
PPA案件の場合
PPAは、さらに誤解が多い分野です。
オンサイトPPA
- 需要家の敷地内
- 基本は自家消費
- 系統への逆潮流がない
この場合は、出力制御の議論自体が発生しにくいケースが多いです。
オフサイトPPA
一方で、オフサイトPPAは事情が違います。
- 発電所は遠隔地
- 系統を使って需要家に送電
- 途中は一般送配電網を利用
この場合、FITでもFIPでもなくても、出力制御の対象になります。
PPAだから安全、というわけではありません。
整理するとこうなる
制度別にまとめると、次のようになります。
- FIT: 出力制御の対象(条件付き補償)
- FIP: 出力制御の対象(市場売上が減る)
- ノンフィット: 出力制御の対象(契約・市場次第)
- オフサイトPPA:出力制御の対象
- オンサイトPPA(完全自家消費): 原則、対象外になりやすい
つまり、
出力制御の有無を分けているのは、「制度」ではなく「系統を使っているかどうか」
ということです。
セカンダリー・金融での重要ポイント

セカンダリーや金融の場では、
- FITか
- ノンフィットか
- PPAか
よりも先に、次の質問を置く方が安全です。
この案件は、系統に連系されているか?
YESであれば、出力制御リスクはゼロにはなりません。
そのうえで、
- どの出力制御ルールに属するか
- エリアとして抑制が常態化しているか
を、これまでの記事で整理してきた「2つの物差し」で評価していく、
という流れになります。

まとめ
出力制御は「制度の話」ではない
最後に一言でまとめます。
- 出力制御はFIT特有の話ではない
- FIP・ノンフィット・PPAでも適用される
- 判断軸は系統につながっているかどうか
この整理ができると、「この案件は出力制御がある/ない」
「なぜそのリスクを見込むのか」を、
制度に振り回されずに説明できるようになります。