AI(人工知能)、データセンター、半導体、EV、蓄電池――。
世界の産業構造が大きく変化するなかで、あらためて重要性を増しているのが「資源」と「電力」です。
限りある資源をいかに有効活用するか。そして、増え続ける電力需要をどのように支えるか。
一見すると異なるテーマのようですが、これからの産業を考えるうえでは、どちらも切り離すことのできない課題になっています。
株式会社永輝商事の原点を振り返ってみると、そこには現在の資源循環、半導体、再生可能エネルギーへとつながる、一つの興味深い流れがあります。
その歩みを象徴する一人が、永輝商事の設立者であり、その後、株式会社RS Technologiesを設立した方永義氏です。
永輝商事から始まった「資源を生かす」事業
方永義氏は1990年代末に永輝商事を設立し、オフィス機器や家電のリサイクル、スクラップなどの事業を手掛けました。
当時は現在ほど「サーキュラーエコノミー」という言葉が一般的ではありませんでしたが、使い終えた製品や設備を再び資源として生かすという考え方は、まさに今日の資源循環につながるものです。
その後、この「再利用する」という発想は、思いがけない形で半導体産業へとつながっていきます。

知らない市場だからこそ、学んで挑戦する
2010年、ラサ工業がシリコンウエハー再生事業から撤退することになりました。
当初、方氏は工場設備を取得し、海外へ売却することを考えていたとされています。
しかし、設備の価値や半導体市場の将来性を調べていく中で、「これから半導体市場は伸びる。自分で事業をやった方がいい」という助言を受けました。
そこで選んだのが、設備を売ることではなく、自ら半導体産業へ参入するという道でした。
2010年12月、株式会社RS Technologiesが設立されます。
半導体の専門家としてスタートしたわけではありません。
だからこそ、一から業界を学び、製造工程を理解し、顧客を開拓していく必要がありました。
このエピソードから感じるのは、
「知らない業界だからやらない」のではなく、「成長する市場なら、まず学んでみる」
という姿勢です。
創業直後に東日本大震災
ところが、事業開始直後に大きな試練が訪れます。
2011年3月の東日本大震災です。
宮城県の三本木工場も被害を受け、創業間もない会社は厳しい状況に置かれました。
そのなかでも社員への給与支払いを続け、西日本から必要な物資を調達しながら事業再開を目指したとされています。
同時に、方氏自身も全国各地を営業して回り、大手電機メーカーなどとの取引開拓を進めていきました。
危機の中で社員や取引先との信頼関係を築いたことが、その後の成長を支える土台の一つになったと考えられます。

TSMCから突きつけられた「価格も納期も半分」
そして、大きな転機となったのが、世界最大級の半導体受託製造企業であるTSMC(台湾積体電路製造)への営業でした。
そこで示された条件は極めて厳しいものでした。
「価格を半分にする」
そして、
「リードタイムも半分にする」
という要求です。
普通なら、「そんな条件ではできない」と考えてしまうところでしょう。
実際、従来の製造方法をそのまま続けていれば、簡単に達成できる条件ではありません。
しかし、ここで行われたのが、これまで当たり前だと思われていた製造工程そのものの見直しでした。
一つ一つの作業を検証していくと、必要以上に品質を追求した「オーバースペック」の工程が存在することが分かってきました。
例えば、本当にそこまで洗浄する必要があるのか。本当に従来と同じ工程をすべて残す必要があるのか。
「昔からこの方法だから」という理由ではなく、
「顧客が本当に必要としている品質とは何か」
という視点から工程を組み直していったのです。
その結果、価格とリードタイムを改善し、TSMCからの受注獲得につながりました。
ここには、新規事業を考えるうえで非常に重要なヒントがあります。
顧客の厳しい要求は、事業を変えるきっかけになる
顧客から「もっと安く」「もっと早く」「もっと使いやすく」と求められたとき、それを単なる値下げ要求として受け取るのか。
それとも、
「現在の商品や工程そのものを見直す機会」
と捉えるのか。
この違いは大きいのではないでしょうか。
TSMCとの取引拡大をきっかけに、RS Technologiesの再生ウエハー事業は大きく成長していきます。

日本から台湾・中国へ
その後、事業は日本国内だけにはとどまりませんでした。
半導体産業の集積地である台湾に進出し、再生ウエハー事業を拡大。
さらに中国では、プライムウエハーと呼ばれる新品のシリコンウエハー事業にも参入しました。
現在のRS Technologiesは、シリコンウエハー再生を主力としながら、半導体関連分野へ事業領域を広げています。
同社自身も企業理念として「常に創造し挑戦する」ことを掲げ、関連分野への事業拡大を進めています。
そして、半導体からエネルギーへ
もう一つ注目したいのが、エネルギー分野への展開です。
RS Technologiesは2023年、バナジウムレドックスフロー電池(VRFB)に使われる電解液事業を承継し、福島県浪江町の工場を拠点としてエネルギー事業への取り組みを進めています。
AI、データセンター、半導体工場が増えれば、それを動かすための膨大な電力が必要になります。
つまり、
半導体の成長は、エネルギー需要の成長でもあります。
半導体とエネルギーは、これからますます密接に結び付いていくと考えられます。
資源を再利用する事業から始まり、再生ウエハー、新品ウエハー、そして蓄電分野へ。
時代の変化とともに成長市場を探し、事業を変化させてきたことが分かります。
現在の永輝商事にもつながる「新しい市場へ挑戦する姿勢」
もちろん、現在の株式会社永輝商事とRS Technologiesは別の企業であり、それぞれ独自の事業を展開しています。
しかし、永輝商事の現在の取り組みを振り返ると、創業時から続く考え方と重なる部分があります。
現在、永輝商事では太陽光発電をはじめ、系統用蓄電池、省エネルギー関連商材、LEDを活用した安全関連商品、環境・資源循環につながる新しい商材など、さまざまな分野への取り組みを進めています。
商品も市場も創業当時とは大きく変わりました。
それでも、
既存事業だけにとらわれない。
成長する市場を探す。
知らない分野でも、まず学んでみる。
顧客の声を聞き、商品や仕組みを改善する。
こうした姿勢は、新しい事業を生み出すうえで、今も変わらず重要ではないでしょうか。
「今までこうだった」を疑ってみる
TSMCとの取引のエピソードで、私たちが特に興味深いと感じるのは、世界的な企業から受注したという結果だけではありません。
「価格も納期も半分に」という、一見すると不可能にも思える要求を受けたときに、
「できない理由」を探すのではなく、「今のやり方は本当に必要なのか」を考え直したことです。
新商品や新規事業を検討していると、つい既存の商品仕様や業界の常識を前提に考えてしまいます。
しかし、顧客が欲しいのは「従来と同じ製品」とは限りません。
必要なのは、
顧客が本当に必要としている機能や価値を見つけること。
それ以外の部分を見直すことで、新しい価格、新しい商品、新しい市場が生まれる可能性があります。
資源循環から半導体へ。半導体からエネルギーへ。
産業は常に変化しています。
リサイクルから半導体へ。
半導体からエネルギーへ。
そして現在は、AI、データセンター、再生可能エネルギー、蓄電池、サーキュラーエコノミーなど、新たな市場が次々と生まれています。
企業が長く成長していくために必要なのは、同じ商品を売り続けることだけではなく、時代の変化を読みながら、新しい市場へ踏み出し続けることなのかもしれません。
株式会社永輝商事も、太陽光発電、系統用蓄電池、省エネルギー、資源循環、そして新たな商品・サービスを通じて、これからの社会に必要とされる事業を探し続けていきます。
「今までこうだった」にとらわれず、顧客にとって本当に必要なものは何かを考える。
そこから、永輝商事の次の事業が生まれてくるのかもしれません。
