「いい土地だ!」と思ったら…最後に待つ“道の罠”
再生可能エネルギーの拡大とともに、系統用蓄電池のニーズは急速に高まっています。電力の需給バランスを調整するために不可欠なインフラとして、全国各地で設置が進められています。

しかし、実際に蓄電池ビジネスに取り組もうとした際、多くの土地オーナーや事業者が直面する「落とし穴」があります。
それが——
「道が通れない」=道NG
という問題です。
どれだけ好立地で広い土地があり、電力会社との連系が可能であっても、大型トレーラーやクレーンが搬入できなければ、設置自体が物理的に不可能になります。
つまり、蓄電池ビジネスは「道から始まり、道で終わる」と言っても過言ではありません。
本記事では、設置断念の主要原因となる“道NG”について、実際の現場で起きている問題とその対策を、実務者目線で詳しく解説していきます。
系統用蓄電池には「2つのタイプ」がある

まず前提として、蓄電池にも設置方法や形状に違いがあります。これを知らないと、土地に合わない蓄電池を選んでしまい、余計な時間とコストをかけることになります。
コンテナタイプ
こちらは文字通り、海上コンテナサイズ(20ft・40ft)に収められた蓄電池ユニット。1台で15〜30tもの重量があり、重低床トレーラーでの搬入とロケーションによっては、120t級の大型クレーンによる吊り下ろしが必要です。
- 特徴:工場出荷時にほぼ完成した状態で納品されるため、現地工事が少ない
- メリット:短期間で設置完了、メンテナンス性が高い
- デメリット:とにかく重くて大きい。道路条件が非常に厳しい
キャビネットタイプ
キャビネットタイプは、比較的小型のユニットを複数組み合わせて設置する方式。搬入車両も4t〜10tトラックや小型クレーンで対応可能な場合が多く、狭い道路にも柔軟に対応できるのが強みです。
- 特徴:部材を現地で組み立てる方式
- メリット:分割搬入ができるため、狭小地でも設置可能性あり
- デメリット:施工工程がやや複雑で、工期はやや長くなりがち
コンテナタイプより、キャビネットタイプは特殊車両申請が無い分、車両台数が4トン車レベルで25台以上必要と言われています。
設置NGのリアルな事例集
事例1:広大な農地、しかし老朽橋がネック
土地は1,000坪以上、日当たりも良好。連系も取れる状態だったが、手前にある橋の重量制限が20t未満。40tを超えるトレーラーが通行できず、設置断念。
事例2:住宅街の曲がり角でストップ
土地の入口幅は8mあったが、進入口のカーブが直角に近く、トレーラーが物理的に曲がれない。近隣には電柱もあり、移設も困難。
事例3:坂道がネックで作業不能
山間部にある土地。現地までの道路は片側3.5mと広くはあったが、坂道の勾配が約10%。トレーラーは途中でストップし、クレーンも傾斜に対応できず断念。
設置不可の原因TOP5
| ランキング | NG要因 | 詳細 |
|---|---|---|
| 第1位 | 橋 | 重量制限・幅・老朽化により大型車通行不可 |
| 第2位 | 曲がり角 | カーブが鋭角すぎて旋回不可能 |
| 第3位 | 坂道 | 勾配7%を超えると車両が登れない |
| 第4位 | 道幅不足 | 5.5m未満の道は基本的に通行困難 |
| 第5位 | 路面強度 | 側溝フタや舗装が弱く、車両重量に耐えられない |
道と行っても、大半のメーカーが輸入品であるため現場納品の事を想定した場合、その道は、入港した港から設置場所までの道のりの事を指します。
重要!設置NGを防ぐ10の道チェック

- 道幅は6m以上あるか?
- 電柱や標識、木の枝などが飛び出していないか?
- 曲がり角の間口は10〜14m確保されているか?
- 橋の重量制限が30t以上あるか?
- 坂道の勾配は7%以下か?
- 路面の強度は十分か?舗装にひび割れや沈下のリスクがないか?
- トンネルやアンダーパスの高さ制限はないか?
- 踏切に段差や急傾斜がないか?
- 土地の入り口間口は10m以上あるか?
- 側溝フタの耐荷重は20t以上あるか?
上記チェック項目にNGに該当して、直ぐ諦めてはもったいないです。専門の業者やメーカーに確認しながら進めていくのがベターです。
道幅「片側3.5m」で本当に大丈夫?
多くのオーナーが「片側3.5mもあれば大丈夫でしょう?」と考えがちですが、これは非常にギリギリのラインです。
理論上は通行可能でも、実務上はNGになりやすい
- トレーラー幅:約2.9m
- 安全通行に必要な余白:約60cm(左右)
つまり、3.5mの道幅でギリギリ通れる計算になりますが、
- 道路脇にガードレール
- 電柱が道路に飛び出ている
- 壁や塀がギリギリに建っている
といった状況があると、通行できる幅が大きく制限されます。
さらに、曲がり角やカーブがある場合、3.5mの道では旋回が不可能な場合も多いのです。
結論:「片側3.5m」は希望はあるが、現地確認が必須
- 幅の数字だけで判断しない
- 周囲環境も含めた「実効幅」を見る
- 不安がある場合はメーカーに写真・動画・地図で確認してもらう
蓄電池のタイプで「道の条件」は変わる
| チェック項目 | コンテナタイプ | キャビネットタイプ |
|---|---|---|
| 道幅 | 片側3.5〜4.0m必要 | 片側3.0m程度でも可 |
| 曲がり角 | 大型旋回が必要 | 小型車両で比較的対応しやすい |
| 勾配 | 6%以下推奨 | 7〜8%まで対応可能なケースも |
| 障害物(電柱など) | 接触リスク高 | 小型車両で回避しやすい |
| クレーン設置スペース | 大規模必要 | コンパクトで対応可能 |
勾配についても、不安がある場合も専門の業者、メーカーに確認しましょう。
1件1件異なるロケーションの系統用蓄電池

系統用蓄電池ビジネスの成功可否は、土地のスペックだけでは決まりません。
実際には、「そこに“モノ”を運べるか」「設置できる環境が整っているか」がすべてです。
「いい土地を見つけた」と思ったら、必ずその土地までのアクセス経路に目を向けてください。
1.設置タイプに合った道路条件を満たしているか?
2.曲がれるか、登れるか、設置できるか?
3.自己判断せず、プロの目で現地確認してもらうこと
これらを押さえることで、数百万〜数千万円の損失リスクを防ぐことができます。