災害時に病院の電力確保が最優先となる理由
病院は、医療機器の稼働や生命維持装置の使用など、常に安定した電力供給が必要です。しかし、日本は地震や台風などの自然災害が多く、停電が発生するリスクが高い国でもあります。
特に大規模災害時には、送電線の断線や発電施設の被害により、長時間にわたる停電が発生する可能性があります。
こうした状況に備え、病院では非常用発電機やバッテリーを備えていますが、それだけでは十分とは言えません。従来の中央集権型エネルギー供給に頼るだけではなく、分散型エネルギーの活用が求められています。
分散型エネルギーとは?

分散型エネルギーとは、従来の大規模発電所から送電するのではなく、地域ごとに小規模な発電設備を分散配置し、必要な場所でエネルギーを供給するシステムです。
代表的な分散型エネルギーには以下のようなものがあります。
- 太陽光発電:病院の屋上や敷地内に設置可能で、昼間の電力を確保。
- 風力発電:風の強い地域では有効な発電手段。
- 燃料電池(コージェネレーション):ガスを利用して発電し、同時に排熱を利用することで効率的にエネルギーを活用。
- 蓄電池システム:発電した電力を蓄えて、必要な時に使用できる。
- マイクログリッド:地域単位で電力を管理し、災害時にも独立して電力を供給可能。
これらの技術を組み合わせることで、病院は停電時でも電力を確保し、患者の命を守ることができます。
〈マイクログリッドとは?〉
特定の地域や施設内でエネルギーの発電・蓄電・消費を一元的に管理する小規模な電力網のことを指します。通常、再生可能エネルギー(太陽光・風力発電など)や蓄電池を活用し、電力の需給を最適化する仕組みを持っています。
病院における分散型エネルギーの導入メリット
病院が分散型エネルギーを導入することで、以下のようなメリットがあります。
災害時の電力供給を確保
分散型エネルギーを導入することで、停電時でも病院が独立して電力を確保できるため、救命活動の継続が可能になります。特にICUや手術室など、電力が不可欠な施設での安定した運用が実現します。
エネルギーコストの削減
再生可能エネルギーを利用することで、電力コストの削減につながります。例えば、太陽光発電を導入すれば、昼間の電力を自給でき、電力会社からの購入電力量を減らすことができます。
CO2排出量の削減
化石燃料に依存せず、再生可能エネルギーを活用することで、病院の環境負荷を低減し、SDGs(持続可能な開発目標)にも貢献できます。
電力の安定供給による医療の質向上
安定した電力供給が確保されることで、病院の診療体制が途切れることなく維持され、患者に対する医療サービスの質が向上します。
参考事例:分散型エネルギーを導入した施設と大手ガス会社のソリューション

日本国内でも、分散型エネルギーを導入し、非常時に備えている病院が増えています。
ケース1:埼玉県がんセンター病院 この病院では、日照条件の良い職員公舎等に太陽熱集熱装置、太陽光パネルを集中して設置し、再生可能エネルギーを導入するとともに、最新のガスコージェネレーションシステム等の高効率設備を導入し、従来と比較して、該当地域内のCO2排出量を約35%削減できる見込みとして、東京ガスと協業しています。
ケース2:大阪ガス 患者さまに常に安定した医療を提供するためには、通常時はもちろん、緊急時にも稼働を続けられる医療環境づくりを行っており、停電対応等のBCP対策から、病院の規模に合わせた最適なエネルギー関連設備の導入や初期費用の負担軽減、エネルギー使用状況の見える化・施設の一括管理までDaigasエナジーがトータルサポートを構築されています。
まとめ:病院における分散型エネルギーの重要性
病院において電力は、生命維持に直結する最も重要なインフラの一つです。日本のように自然災害が頻発する国では、分散型エネルギーの導入が病院の安全性と持続可能性を高める鍵となります。
特に、太陽光発電や蓄電池、燃料電池、マイクログリッドなどの技術を適切に活用することで、停電リスクを軽減し、医療サービスを継続できる体制を整えることができます。
今後の病院経営において、分散型エネルギーの活用は不可欠となるでしょう。災害に強い病院づくりのためにも、今すぐ導入を検討することが求められます。