ここまでの記事で、次のことは整理できました。
すると、最後に必ず残るのが、この問いです。
出力制御がある前提でも、事業として本当に成立するのか?
この記事では、「成立する/しない」を断定するのではなく、
どこが分岐点になるのかを整理します。
よくある極端な判断
「無制限なら無理」「FITだから大丈夫」
実務では、判断が両極端に振れがちです。
- 無制限・無補償 → もう事業にならない
- FIT案件 → 国が守ってくれるから大丈夫
どちらも、現実とはズレています。
出力制御は、事業性を一撃で壊す要素ではなく、
設計次第で効き方が大きく変わる変数です。
基本整理:出力制御は「事業性を決める唯一の要因」ではない

まず大前提として、
- 出力制御がある
- 無制限ルールに属している
というだけで、即「不成立」になるわけではありません。
出力制御無制限のルールが開始された当初は、事業性が読めないと言うことで
資金調達ができない時代もありました。今は、時代が異なります。
事業性は、次の要素の組み合わせで決まります。
- 抑制率(どれくらい止まるか)
- 売電単価(FIT/市場/PPA価格)
- 建設コスト・取得価格
- 借入条件(LTV・DSCR)
- 運転期間(残存年数)
出力制御は、この中の1変数にすぎません。
実務で見るべき3つの分岐点
分岐点① 抑制率が「何%か」ではなく「いつ・どう効くか」
同じ年5%の抑制でも、「春秋の昼間に集中する」「市場価格が低い時間帯に多い」
のであれば、収益への影響は意外と小さいことがあります。
逆に、
- 夏の高需要期
- 高価格時間帯
に重なると、数字以上に効いてきます。
重要なのは「平均何%か」より「どの時間帯か」です。
分岐点➁ 売電単価がどこにあるか
同じ抑制率でも、
- FIT 36円
- FIT 18円
- 市場連動+FIP
- PPA固定単価
では、意味がまったく違います。
- 高単価FIT: 抑制があっても吸収できる余地が大きい
- 低単価・市場連動: 数%の抑制がDSCRに直撃する
「抑制率 × 単価」で初めて影響が見えます。
分岐点③ 価格にどこまで織り込まれているか
セカンダリーで最も重要なのがここです。
- 出力制御リスクを取得価格に反映できているか
たとえば、
- 無制限ルール
- 抑制常態エリア
であるにもかかわらず、
「過去実績が少ないから大丈夫」
として価格が高止まりしていれば、
それは事業性ではなく、期待値で買っている状態です。
逆に、
- 抑制前提
- 保守的な発電量想定
で価格が調整されていれば、事業として成立する余地は十分あります。
ただ、商談上なかなか希望価格値通りに購入できる可能性の難しさはあります。
FIT・FIP・PPA別の成立ラインの考え方

FIT案件
- 高単価年度: 無制限でも成立余地あり
- 低単価年度: 抑制率次第で分岐
「FITだから安全」ではなく「どの単価か」が重要です。
FIP案件
- 抑制時は 市場売上もプレミアムも消える
- 市場価格と抑制時間帯の相性が重要
価格変動と抑制が同時に効く点が最大のリスク。
PPA案件
- 固定単価PPA:抑制分はそのまま売上減
- 契約で誰がリスクを負うかが分かれ目
PPA=安定ではなく、契約条項の中身次第です。
金融機関が見ているポイント
金融機関は、「出力制御があるか」よりも、
- 想定は保守的か
- 説明は一貫しているか
- 悪いケースを隠していないか
を見ています。
実務的には、
「出力制御を〇%想定しています」
よりも、
「このエリアでは抑制が常態化しており、保守的に△%を織り込んでいます」
という説明の方が、与信は通りやすいのが現実です。
まとめ:出力制御があっても、事業は「成立する場合がある」

最終的な整理は、こうです。
- 出力制御がある=不成立、ではない
- 無制限ルール=即NG、でもない
成否を分けるのは、設計・価格・説明の整合性
出力制御は、
「見なかったことにするリスク」ではなく「前提として扱うべき条件」
です。
これを正面から織り込める案件は、
むしろ長く安定する可能性が高いとも言えます。