セカンダリー案件や既存案件の評価をしていると、
必ず一度はこの状況に当たります。
- 「接続申込日が分からない」
- 「資料が残っていない」
- 「前オーナーも把握していない」
その結果、
この案件、30日なのか、360時間なのか、無制限なのかはっきり言えない
という状態になります。
この記事では、接続申込日が不明な案件を、どう扱えばよいのかを、
「制度論」ではなく実務判断の整理としてまとめます。
前提整理

接続申込日は「ルールを決める日」だが、分からないことも多い
これまでの記事で整理してきた通り、
出力制御ルール(30日/360時間/無制限)は接続申込日・出力・エリアで決まる
というのが原則です。
ただし実務では、「2012〜2016年頃の古い案件」「権利移転を何度もしている案件」
「小規模・個人系の案件」ほど、接続申込日を示す一次資料が残っていないことが
珍しくありません。
ここで重要なのは、 「分からない=評価不能」ではないという点です。
よくある誤解
「接続申込日が分からないなら、最悪ケースで見るしかない」
金融・投資の場では、
不明なら、無制限ルール前提で見るべきだ
という話になりがちです。
これは一理ありますが、常に正解とは限りません。
なぜなら、
- エリアによって切替時期が大きく違う
- 2014年以前の案件であれば、無制限に入らない可能性も十分ある
からです。
重要なのは、「不明な理由」と「不明な範囲」を切り分けることです。
実務での基本スタンス

接続申込日が不明な案件は「3段階」で評価する
実務的には、次の3ステップで整理すると判断しやすくなります。
ステップ①
分かっている事実をすべて積み上げる
まず、次の情報を洗い出します。
- 運転開始日(運開日)
- 設備認定日/事業計画認定日
- FIT単価の年度
- 電力会社エリア
- 出力区分(低圧/高圧/特高)
- 初回連系時期の説明(ヒアリング含む)
ここで大事なのは、「確定情報」と「推定情報」を混ぜないことです。
ステップ②
制度上、入り得るルールを絞る
次に、エリア別の切替表を使って、理論上あり得る範囲を限定します。
たとえば、
- 運開が2013年
- 九州電力エリア
- 高圧案件
であれば、2015年1月26日以降の無制限ルールに入る可能性は制度上ほぼないという判断ができます。
逆に、
- 運開が2018年
- 東京電力PG
- 高圧
であれば、 360時間ルールか無制限ルールのどちらか、という整理になります。
ステップ③
「評価前提」を明示して扱う
最も重要なのがここです。接続申込日が確定できない場合、
評価は「前提条件付き」で行うのが実務の基本です。
例:
- ケースA:360時間ルール前提
- ケースB:無制限ルール前提
というように、2パターン(場合によっては3パターン)で
事業性を試算します。
ここで重要なのは、どちらかに断定しないことです。
金融・投資向けの実務対応フレーズ
説明の場では、次のような言い方が現実的です。
「本案件については、接続申込日を示す一次資料が確認できていません。そのため、
出力制御ルールは〇〇電力エリアの制度切替時期を踏まえ、360時間ルールと
無制限ルールの両ケースで事業性を評価しています。」
この一文があるだけで、
- 認識不足
- 隠している
- 楽観的に見ている
という印象を避けられます。
それでも判断を詰めたい場合の補助材料

どうしてももう一歩踏み込みたい場合、次のような
間接情報がヒントになることがあります。
- 接続負担金の請求時期
- 系統連系工事の契約日
- 電力会社とのメール履歴
- 初回検針・初回売電月
- 当時の開発会社の標準スケジュール
ただし、これらはあくまで推定材料であり、
「確定情報」として扱わない。 評価前提に使ったことを明示することが重要です。
「分からない案件」は、実は珍しくない
最後に、強調しておきたい点があります。
接続申込日が不明な案件は、「レアケース」「問題案件」ではありません。
むしろ、2010年代前半の太陽光では“普通に存在する状態”です。
重要なのは、「分からないことを隠さない」「分からない前提で、どう評価
しているかを示す」という姿勢です。
まとめ

不明な場合は「断定しない評価」が正解
整理すると、実務的な答えはこうなります。
- 接続申込日が不明でも、評価はできる
- エリア・運開時期・制度切替表で入り得るルールを限定
- 前提条件を明示した複数ケース評価を行う
これは弱気な対応ではなく、最もプロフェッショナルなリスク整理です。