売電しない太陽光発電を検討する企業が増えている
近年、「売電を前提にしない太陽光発電」を検討する企業や自治体が増えています。固定価格買取制度(FIT)の縮小・終了や電気料金の上昇を背景に、エネルギーコストを自らコントロールしたいという意識が高まっているためです。
その中で注目されているのが、完全自家消費型の太陽光発電システムです。
本記事では、完全自家消費型太陽光発電について、
- どのような考え方のシステムなのか
- オフグリッドや防災電源とどう違うのか
- 検討から導入、手続きまでの流れ を、初めて検討する立場でも誤解が生じないよう整理します。
よくある誤解:完全自家消費=電力を100%自給することではない

「完全自家消費100%」という言葉から、施設全体の電力を太陽光だけで賄うイメージを持たれることがあります。しかし、完全自家消費型=電力自給率100%ではありません。
完全自家消費型とは、
- 太陽光で発電した電気を
- 売電せず
- すべて自施設内で消費する という電気の使い方を指します。
たとえば、施設全体の電力使用量のうち30%を太陽光で賄い、残り70%を電力会社から購入している場合でも、売電が発生していなければ完全自家消費型と呼びます。
ここで混同しやすい指標を整理すると、次のようになります。
- 完全自家消費:発電した電気を売電していないかどうか
- 太陽光自給率:施設全体の電力のうち何%を太陽光で賄っているか
この2つは別の軸であり、分けて考えることが重要です。
基本整理:完全自家消費型太陽光発電とは
完全自家消費型太陽光発電システムとは、発電した電力を売電せず、すべて自施設で使用することを前提に設計された系統連系型の太陽光発電システムを指します。
重要なのは、「結果として売電しない」のではなく、設計段階から売電が発生しないように考える点です。
そのため、
- 発電量と消費量のバランス設計
- 逆潮流を防ぐ制御
- 必要に応じた蓄電池の併設 といった検討が欠かせません。
なぜ100%自家消費でも系統連系を行うのか
「発電した電気をすべて使うなら、電力会社の系統につなぐ必要はないのではないか」という疑問は、非常によく聞かれます。
完全自家消費型であっても、系統連系が選ばれる理由は明確です。
電力不足を補うため
太陽光発電は、夜間や悪天候時には発電できません。系統連系を行うことで、発電量が不足する時間帯を電力会社の電気で補い、事業を継続できます。
システムの安定性を確保するため
発電と消費のバランスが崩れた場合、系統があることで制御の逃げ道が生まれ、設備停止リスクを抑えられます。
設備コストを現実的な水準に抑えるため
完全オフグリッドで電力を賄おうとすると、大容量の蓄電池や余裕を持った発電設備が必要となり、コストが大きくなります。系統を残すことで、現実的な設備規模での運用が可能になります。
検討から導入までの基本的な流れ

電力使用状況の把握
時間帯別・季節別の電力使用量を把握し、太陽光でどの程度を賄うのかを整理します。
発電規模の考え方を決める
屋根に載るだけ設置するのではなく、「使い切れる発電量」を基準に規模を検討します。
システム構成の検討
太陽光のみとするか、蓄電池を併設するか、逆潮流防止の方式をどうするかなど、目的に応じて構成を決めます。

手続き面で注意すべきポイント
完全自家消費型であっても、系統連系を行う以上、電力会社との協議や申請は原則として必要です。
- 系統連系の有無
- 逆潮流の有無
- 設備規模
これらの条件によって、必要な手続きや書類は変わります。「売電しない=手続き不要」とはならない点に注意が必要です。
防災・BCPとの関係で押さえておきたい点

完全自家消費型太陽光発電は、自動的に防災電源になるわけではありません。
停電時に電力を使用するためには、
- 自立運転機能の有無
- 給電できる範囲
- 蓄電池容量 を別途検討する必要があります。
防災目的での活用を考える場合は、完全自家消費という言葉だけで判断せず、停電時の挙動を具体的に確認することが重要です。
まとめ:完全自家消費は「売電しない設計思想」
完全自家消費型太陽光発電は、施設全体を太陽光だけで賄う仕組みではありません。
- 発電した電気を売らない
- 自施設で使い切る
この設計思想が完全自家消費型の本質です。
導入を検討する際は、「太陽光でどこまで賄いたいのか」「系統電力とどう役割分担するのか」を整理したうえで、自社に合った形を検討することが重要です。