系統用蓄電池を取り巻く電力市場では、制度や取引ルールの変更が続いています。
その中で注目したいのが、2026年9月1日の実需給分から予定されている、需給調整市場の一部商品の上限価格変更です。
今回は、上限価格が15円から10円へ変更されることで、系統用蓄電池の事業にどのような影響が考えられるのか、専門的になりすぎない範囲で整理します。
1.9月から何が変わるのか

需給調整市場とは、電力の需要と供給のバランスを保つために、発電設備や蓄電池などの「調整する力」を取引する市場です。
2026年9月1日の実需給分から、一次調整力、二次調整力①、複合商品などのΔkW上限価格が、15円から10円/ΔkW・30分へ変更されます。
つまり、これまで15円まで認められていた一部商品の上限が、10円になるということです。
系統用蓄電池は、充放電を比較的素早く行えるため、需給調整市場との相性がよく、事業収益を考えるうえでも重要な市場の一つとなっています。
そのため、今回の変更がどの程度影響するのか気になるところです。
2.「15円から10円」でも売上が3分の1減るわけではない

数字だけを見ると、
15円 → 10円
なので、「売上も約33%減ってしまうのでは?」と考えてしまいそうです。
しかし、実際にはそれほど単純ではありません。
市場で成立している価格が毎回15円だったわけではなく、すでに平均価格が10円を下回っている商品も多いためです。
10円以下で成立していた取引については、上限価格が10円になっても直接的な影響はありません。
そのため今回の変更では、これまで10円を超える比較的高い価格で成立していた部分が、主な影響を受けると考えられます。
元記事の2026年8月時点の独自集計では、全国への影響は**約▲8.6%**と推計されています。
ただし、これは制度として決められた減少率ではありません。過去の市場データを使った試算であり、今後の実際の収益が一律に8.6%減少するという意味でもありません。
3.影響を受けやすい商品やエリアは?

商品によっても影響には違いがあります。
元記事の分析では、蓄電池の参加比率が高い一次オフラインについて、影響が比較的大きくなる可能性が示されています。
2026年8月時点の元記事による推計では、一次オフラインは全国で約▲22%。さらに「東北×一次オフライン」では**約▲32%**という試算も示されています。
東京エリアについても、他の地域より影響が大きくなる可能性があるとされています。
一方、すでに平均価格が10円を下回って推移している商品・エリアでは、今回の上限価格変更による影響は比較的小さくなると考えられます。
つまり、「全国の蓄電池が同じ影響を受ける」のではなく、参加する商品やエリアによって差が出るという点が重要です。
4.系統用蓄電池事業で今後考えたいこと

今回の制度変更から改めて考えたいのが、系統用蓄電池の収益源です。
需給調整市場は重要な市場ですが、一つの市場だけを前提に長期間の収益を予測することは難しくなっています。
例えば、蓄電池には需給調整市場のほかにも、JEPX(日本卸電力取引所)での電力取引や容量市場など、複数の市場を活用する考え方があります。
市場価格や制度は今後も変化する可能性があります。
どこか一つの市場だけを見るのではなく、複数の収益機会を組み合わせながら、設備の充放電方法や運用方法を検討することが、これまで以上に重要になりそうです。
5.まとめ
2026年9月1日から、需給調整市場の一部商品の上限価格が15円から10円へ変更されます。
ただし、これは系統用蓄電池の売上全体が一律に3分の1減少するという話ではありません。
実際の影響は、参加する商品、市場価格、エリア、蓄電池の運用方法などによって異なります。
特に高価格帯で成立していた取引や一次オフラインなどでは、影響を確認していく必要があります。
系統用蓄電池は、制度や市場環境によって事業性が変化する分野です。
今回の変更だけを悲観的に見るのではなく、需給調整市場、JEPX、容量市場などを含め、収益構成と運用方法を継続的に見直していくことが大切ではないでしょうか。
永輝未来ラボでも、今後の市場動向や蓄電池に関する情報を引き続き分かりやすくご紹介していきます。