系統用蓄電池の開発を進めていると、
ある段階で突然出てくる言葉があります。
「SVCが必要になる可能性があります」「STATCOMの設置が条件になるかもしれません」
蓄電池を入れるだけの話ではなかったのか。
この装置は何なのか。
どの案件で必要になるのか。
そして、それはいつ分かるのか。
このあたりが曖昧なまま進むと、
事業収支やスケジュールに大きく影響します。
まずは整理していきます。
SVC・STATCOMとは何をする装置か

どちらも一言でいえば
無効電力を調整して電圧を安定させる装置
です。電力系統では、
- 有効電力(kW)
- 無効電力(kVar)
の2つがあり、電圧を安定させるには無効電力の制御が重要になります。
SVC(Static Var Compensator)
- コンデンサやリアクトルを組み合わせた方式
- 比較的古くから使われている
- 段階的な制御が中心
STATCOM(Static Synchronous Compensator)
- パワーエレクトロニクスを使ったインバータ型
- 応答が速い
- 電圧変動への追従性が高い
近年はSTATCOMが選ばれるケースが増えていますが、どちらも目的は「電圧維持」です。
〈参考〉TMEIC社製の
自励式SVC(STATCOM)再エネ用無効電力補償装置
https://www.tmeic.co.jp/product/power_electronics/green_energy/reactive_power
そもそも蓄電池に必要なのか?
ここが一番混乱するポイントです。
結論から言うと、
案件による。必ず必要というわけではない。
なぜなら、系統用蓄電池のPCS(パワーコンディショナ)はもともと一定範囲の無効電力制御機能を持っているからです。
そのため、
- 連系容量
- 接続する電圧階級
- 接続点の系統強度
- 周辺の再エネ導入量
によっては、PCSのみで要件を満たせる場合があります。
どのような案件で発生しやすいか

SVC/STATCOMが話題になりやすいのは、次のようなケースです。
弱い系統に接続する場合
短絡容量が小さいエリアでは、
少しの出力変動でも電圧が変動しやすい。
この場合、電圧安定化のために追加の無効電力補償装置が求められることがあります。
大容量案件
数十MW〜100MW級になると、単体の出力変動インパクトが無視できなくなります。
この場合、
「自前で電圧調整能力を確保すること」
が系統側から求められる可能性があります。
再エネ密集エリア
太陽光や風力が集中している地域では、
電圧変動リスクが高まります。
蓄電池単体の問題というより、エリア全体の電圧維持能力の問題としてSVC/STATCOMが条件になることがあります。
それはいつ分かるのか?
ここが実務上、最も重要です。
基本的には、
接続検討(系統連系検討)の回答段階
で示されます。
流れとしては、
- 事前相談
- 接続検討申込
- 電力会社による潮流計算・安定度解析
- 技術要件の提示
この「技術要件」の中に
- 無効電力供給範囲の指定
- 力率条件
- 追加補償装置の設置条件
が含まれることがあります。
つまり、設計段階ではなく、系統解析の結果として決まるというのが実情です。
事前に予測できるのか?

完全にはできません。
ただし、
- 接続予定エリアの短絡容量
- 同電圧階級での過去案件事例
- 電力会社との事前ヒアリング
で、ある程度の「傾向」は把握できます。
特に大容量案件では、最初からSTATCOM前提で事業費を試算するケースもあります。
よくある誤解
蓄電池があれば電圧問題は解決する
必ずしもそうではありません。
PCSの容量や制御範囲を超える場合、
外部補償装置が必要になります。
SVCやSTATCOMは再エネ専用装置
これも誤解です。
本質は再エネ対策ではなく、電圧安定化装置です。蓄電池でも同様に検討対象になります。
考えるべき分岐点
整理すると、判断の軸は次の3つです。
- 接続点の系統強度
- 連系容量
- 電力会社の技術要件
重要なのは、設備仕様ではなく、系統条件で決まるということです。
事業者側が「必要かどうか」を決めるのではなく、解析結果として提示される。
ここを理解しておくと、資金計画や工程設計の精度が上がります。
まとめ

SVC・STATCOMは、
- 蓄電池の代替ではない
- 電圧を支える補助装置
- 案件ごとに必要性が決まる
そして最も重要なのは、必要性が確定するのは接続検討の回答時という点です。
系統用蓄電池は、「設備の選定」だけでなく、
「系統条件との対話」で成り立つ事業です。
SVCやSTATCOMは、その対話の中で初めて意味を持つ装置と言えます。