再エネ導入拡大中!
近年、再生可能エネルギーの普及が進む中で、電力系統への接続方法として「ファーム型接続」と「ノンファーム型接続」という2つの方式が注目されています。
これらの接続方式は、電力の安定供給や再生可能エネルギーの導入拡大において重要な役割を果たしています。
本記事では、これら2つの接続方式の違いを分かりやすくお伝えし、それぞれのメリットやデメリットについても詳しくご紹介します。
ファーム型接続とは?

定義と特徴
ファーム型接続(Firm Connection)とは、電力系統への接続において、発電事業者が契約した容量分を送電できる方式を指します。
この方式では、発電所が最大出力で発電した際にも、契約容量内であれば電力系統に最低限のリスクを許容しながら電力を送ることが可能です。
メリット
- 安定した送電:契約容量内であれば、発電した電力を常に送電できるため、収益予測が立てやすくなります。
- 出力制御の可能性が低い:系統側の都合で出力を抑制されるリスクが低いため、計画的な運用が可能です。
デメリット
- 接続容量の制約:系統の空き容量が限られている場合、新規のファーム型接続が難しくなることがあります。
- 設備増強の必要性:系統容量を確保するために、高額な設備増強工事が必要となる場合があります。
ノンファーム型接続とは?
定義と特徴
ノンファーム型接続(Non-Firm Connection)とは、電力系統の空き容量に応じて、発電事業者が電力を送電できる接続方式です。
具体的には、系統に余裕がある場合には送電が可能ですが、系統が混雑している場合には出力制御(電力の抑制)が行われることがあります。
メリット
- 接続機会の増加:系統の空き容量がない場合でも、条件付きで接続が可能となり、再生可能エネルギーの導入拡大に寄与します。
- 設備増強コストの削減:系統増強工事の負担を抑えながら接続できるため、初期投資を抑えることができます。
デメリット
- 出力制御のリスク:系統混雑時には出力制御が行われるため、発電した電力を全て送電できない可能性があります。
- 収益の不安定性:出力制御により売電量が変動するため、収益予測が難しくなる場合があります。
ファーム型接続とノンファーム型接続の主な違い

項目 | ファーム型接続 | ノンファーム型接続 |
---|---|---|
送電の保証 | 契約容量内で送電可能 | 系統の空き容量に応じて 送電可能 |
出力制御 | 基本的になし | 系統混雑時に出力制御あり |
接続の容易さ | 系統容量次第で制約あり | 条件付きで接続が容易 |
設備増強 | 必要な場合あり | 基本的になし |
ノンファーム型接続の導入背景と現状
再生可能エネルギーの普及に伴い、多くの発電所が系統接続を希望していますが、系統容量の制約から接続が難しいケースが増加しています。
この問題を解決するため、2019年に東京電力パワーグリッドの千葉・鹿島エリアでノンファーム型接続の試行が開始され、2021年1月13日から全国へ展開されました。
引用元: 再エネをもっと増やすため、「系統」へのつなぎ方を変える/資源エネルギー庁
ノンファーム型接続の適用により、既存の系統容量を最大限活用し、再生可能エネルギーの導入拡大が期待されています。
ノンファーム型接続の課題と今後の展望とは?
課題
- 出力制御の頻度と影響:出力制御が頻繁に行われると、発電事業者の収益に大きな影響を与える可能性があります。
- 公平な出力制御ルールの策定:どの発電所がどの程度出力制御を受けるかのルール作りが求められます。
今後の展望
ノンファーム型接続の効果的な運用のためには、以下の取り組みが重要です。
- 系統運用の高度化:リアルタイムでの系統状況の把握と柔軟な運用が求められます。
- 蓄電技術の活用:余剰電力を蓄電し、需要に応じて放電することで、出力制御の影響を軽減できます。
現在、盛んになりつつある系統用蓄電池ビジネスの大半は、ノンファーム型接続です。
ファーム型・ノンファーム型接続を選ぶ際のポイント

再エネ発電事業者にとって、ファーム型とノンファーム型のどちらを選ぶべきかは、以下のような観点から判断することが大切ですが、
但し、どちらかを自由に選べると言うわけではなく、接続先の電力会社や地域の系統状況によって決まります。

プロジェクトのスケール
- 大規模発電所の場合
安定した送電と収益確保が求められるため、ファーム型接続が適しているケースが多いです。 - 小規模発電所や実証段階のプロジェクトの場合
初期投資を抑えつつ早期に運転開始を目指すなら、ノンファーム型接続が有効です。
ファーム型にこだわりますと、高額な系統増強費用を自己負担して採算に合わないこともあるそうです。
地域の系統状況
- 地域によって系統の空き容量や混雑状況は大きく異なります。
- 空き容量が少ない地域では、ファーム型では接続できない可能性が高く、ノンファーム型が現実的な選択肢になります。
出力制御リスクへの許容度
ノンファーム型は、出力制御の頻度や程度によって売電収益が左右されるため、そのリスクをどの程度受け入れられるかも判断材料になります。
出力制御リスクが読めないため、接続自体を辞退すると言った事業者もいらっしゃいます。
エリア別の接続傾向や最新の情報
近年では、特に太陽光発電や風力発電においてノンファーム型接続の導入が加速していますが、特定の地域や電力会社で「ファーム型接続を希望したい」場合は、事前に系統空き情報(OCCTOや電力会社HPで公開)を確認するのが重要です。
北海道電力エリア(ほくでんネットワーク)
北海道電力では、系統アクセスに関する各種制度の概要を公開しています。
ノンファーム型接続の適用:2023年2月1日以降に接続検討を申し込む電源、または2023年4月1日以降に接続検討申し込みが受け付けられる電源は、すべてノンファーム型接続が適用されています。
系統空き容量情報:詳細な系統空き容量情報は、ほくでんネットワークの公式ウェブサイトで提供されています。最新の情報を確認するため、以下のリンクをご参照ください。
東北電力エリア(東北電力ネットワーク)
ノンファーム型接続の適用状況:東北電力ネットワークでは、系統混雑時の出力制御を前提としたノンファーム型接続の適用を拡大しています。
系統空き容量情報:詳細な系統空き容量情報は、東北電力ネットワークの公式ウェブサイトで提供されています。最新の情報を確認するため、以下のリンクをご参照ください。
北陸電力エリア(北陸電力送配電株式会社)
ノンファーム型接続の適用状況:北陸電力送配電では、2023年4月1日より、10kW未満の低圧を除く全ての電源に対してノンファーム型接続の適用を拡大しています。
系統空き容量情報:系統の予想潮流や空容量に関する詳細情報は、北陸電力送配電の公式サイトで公開されています。以下のリンクからご確認ください。
東京電力エリア(東京電力パワーグリッド)
ノンファーム型接続の適用状況:東京電力パワーグリッドでは、すでに多くのエリアでノンファーム型接続が標準化されており、全国初の実証試験も千葉・鹿島エリアで実施されました。現在は空き容量状況に応じて柔軟なノンファーム型対応を行っています。
系統空き容量情報:空容量に関する最新情報やノンファーム型接続対象エリアは、以下のページでマップ表示されています。
中部電力エリア(中部電力パワーグリッド)
ノンファーム型接続の適用状況:中部電力パワーグリッドでは、空き容量のない基幹系統や、受電電圧が基幹系統の電圧階級である電源に対して、ノンファーム型接続の適用を拡大しています。
系統空き容量情報:系統の予想潮流や空容量をマッピング形式で提供しています。最新の情報は以下のリンクからご確認いただけます。
関西電力エリア(関西電力送配電)
ノンファーム型接続の適用状況:関西電力送配電では、2023年4月よりローカル系統へのノンファーム型接続を開始し、空き容量マップの色分け凡例および留意事項が変更されています。
系統空き容量情報:流通設備建設計画や系統連系制約に関する情報は、以下のリンクからご確認いただけます。
中国電力エリア(中国電力ネットワーク)
ノンファーム型接続の適用状況:中国電力ネットワークでは、ノンファーム型接続の適用を拡大しており、系統空容量マップを公開しています。
系統空き容量情報:
詳細な系統空容量マップや系統構成に関する情報は、以下のリンクからご確認いただけます。
四国電力エリア(四国電力送配電)
ノンファーム型接続の適用状況:四国電力送配電では、2022年4月以降、一定条件を満たすすべての新規電源に対してノンファーム型接続を原則適用しています。
対象は、受電電圧が基幹系統の電圧階級である電源や、空容量がないエリアのローカル系統などです。
系統空き容量情報:空容量に関する情報やノンファーム型接続適用条件などは、以下のページから確認できます。
九州電力エリア(九州電力)
ノンファーム型接続の適用状況:九州電力送配電は全国でも先進的な運用を行っており、ノンファーム型接続を広範に導入しています。さらに、2022年度より出力制御の最適化を目的に**「再給電方式」**を導入し、電源の柔軟な制御運用を実施中です。
系統空き容量情報:九州電力では、基幹系統およびローカル系統の空容量マップを含む情報を下記サイトで提供しています。
沖縄電力エリア
ノンファーム型接続の適用状況:沖縄電力では、N-1電制やノンファーム接続など、系統への受け入れ容量の拡大に取り組んでいます。
系統空き容量情報:沖縄電力管内(本島)の空容量マッピング(132kV線路、66kV線路、変電所、配変)に関する情報は、以下のリンクからご確認いただけます。
世の中的には、ノンファーム型接続で進んでいることが分かります。
このプロジェクトはファーム型とノンファーム型どちらが向いている?

ファーム型接続が向いているのは…
- 安定した電力供給と収益が最優先の事業者
- 長期的な収益予測が必要な投資家・金融機関との連携を重視している企業
- 設備増強コストを支払ってでも、出力制限のない運用を目指す発電所
安心なのはやはりファーム型、、、、、でも、採算は?
ノンファーム型接続が向いているのは…
- 初期費用を抑えて再エネ事業に参入したい企業
- 小規模・中規模の再エネ事業者や個人発電所
- 将来的に系統増強を見越した試験的な導入を考えている事業者
ハードルが低いのは、ノンファーム型。出力抑制を事業収支シミュレーションには表現しづらい。
まとめ
ファーム型接続とノンファーム型接続は、どちらも再生可能エネルギー普及のために重要な制度です。
それぞれの特徴を理解し、自社のニーズや地域の系統状況に合わせて最適な選択をすることが、持続可能な再エネビジネスへの第一歩となります。
今後は、系統運用の柔軟性向上やスマートグリッド、蓄電池との連携などにより、ノンファーム型接続の課題も着実に改善されていくでしょう。
再エネ導入拡大が期待される日本の未来において、この2つの接続方式を正しく活用することが、地域経済や脱炭素社会への大きな一歩となるはずです。