広い設置面積を確保しやすい折板屋根
近年、電気料金の高騰や脱炭素社会への取り組みが加速する中、太陽光発電の導入を検討する企業や個人が増えています。
特に工場や倉庫などで多く採用されている「折板屋根」は、広い設置面積を確保しやすく、太陽光パネルの導入に適した屋根構造です。
しかし、折板屋根に太陽光パネルを設置するには、いくつかの重要な条件や注意点を理解する必要があります。
本記事では、折板屋根に太陽光パネルを設置するための条件を解説し、実際にシミュレーションを行った結果をご紹介します。
折板屋根とは?

折板屋根の特徴
折板屋根は、金属製の薄い板を波形や山形に折り曲げた形状の屋根で、以下のような特徴があります。
- 軽量性:金属製であるため、屋根全体の重量が軽く、建物への負担が少ない。
- 高い強度:波形や山形の形状により、耐荷重性や耐風性に優れている。
- 施工性の高さ:大面積の屋根を効率的に施工できるため、短期間での設置が可能。
こうした特徴から、工場や倉庫、大規模な商業施設、コンビニ、ドラッグストアなど広く採用されています。
折板屋根の種類
折板屋根には大きく分けて以下の2種類があります。
- ハゼ式折板屋根:金属板の接合部(ハゼ)を折り曲げて固定する方式。施工時に屋根に穴を開けずに設置できるため、防水性が高い。
- 重ね式折板屋根:屋根材を重ね合わせ、ボルトで固定する方式。設置時には屋根に穴を開ける必要があり、防水処理が重要となる。
折板屋根の種類によって、太陽光パネルの設置方法が異なるため、事前に屋根の構造を確認することが重要です。
折板屋根に太陽光パネルを設置するための条件とは?
屋根の強度と耐荷重性の確認
太陽光パネルや架台の重量を支えられるだけの強度が屋根にあるかを確認する必要があります。一般的に、屋根の耐荷重は10kg/㎡以上が推奨されています。
特に、経年劣化している屋根の場合は、補強工事が必要になる場合があります。
防水対策の重要性
特に重ね式折板屋根の場合、パネル設置時に屋根に穴を開けることが多いため、適切な防水処理を行わないと雨漏りのリスクが高まります。施工業者と相談し、防水対策を徹底しましょう。
風荷重や積雪荷重の考慮
設置地域の気象条件によっては、強風や積雪の影響を受ける可能性があります。風速や積雪量のデータをもとに、適切な設計や固定方法を選ぶことが求められます。
設置位置の最適化
折板屋根は広い面積を持つことが多いですが、屋根の端部や影が発生しやすい場所にはパネルを設置しない方が効率的です。適切な位置を選定し、最大限の発電量を確保しましょう。
実際の屋根面積と太陽光設置可能面積を空ける理由とは?

太陽光パネルを設置する際、屋根全体を活用できるわけではなく、実際の屋根面積と設置可能面積には差が生じます。その理由として、以下の5つの要因が挙げられます。
メンテナンススペースの確保
太陽光パネルは長期間にわたり安定して運用するために、定期的な点検やメンテナンスが必要です。特に、清掃や部品交換時には作業員が安全に移動できるスペースが求められます。そのため、一定の間隔を確保しながら設置するのが一般的です。
屋根上の設備や障害物の影響
多くの建物の屋根には、以下のような設備が設置されていることがあります。
- エアコンの室外機
- 換気扇や排気ダクト
- 避雷針
- 屋根上の点検用通路やハッチ
これらの設備がある場合、パネルの設置エリアが制限されるため、屋根全体を有効活用できないケースが多くなります。
風荷重や積雪荷重を考慮した配置
屋根の端に近い部分は、特に強風の影響を受けやすく、台風や突風によってパネルが飛ばされるリスクがあります。そのため、JIS規格や各種ガイドラインに基づき、屋根の端部から一定の距離を空ける設計が推奨されています。
また、積雪の多い地域では、屋根の中央部分よりも端部分のほうが雪が溜まりやすく、荷重の影響を受けやすくなります。パネルの重量や架台の強度を考慮し、安全性の高い設置レイアウトが求められます。
影の影響を最小限にするための配置
太陽光パネルの発電効率を最大化するためには、影の影響を避けることが重要です。以下のような影の要因を考慮して、設置位置を決める必要があります。
- 建物の近くに高いビルや樹木がある場合
- 屋根上のアンテナや換気口が影を落とす場合
- パネル同士の影が発電量に影響を与える場合
特にパネル同士が影を作る「自己影」にも注意が必要です。パネル間の適切な間隔を設けることで、発電量を最大化できます。
パネルの傾斜角(角度)を高くすると発電量はアップします。ただ、後方に設置するパネルに前方のパネルが影の影響を与える可能性もあるため、間隔を設けて太陽光パネルを設置しなければなりません。
そのため、同じ設置面積でも傾斜角を付けるパターンと傾斜角をつけないパターンでは設置するパネルの枚数も減り、傾斜角を付けるパターンは、自ずと太陽光発電出力ベースで傾斜角をつけないパターンより劣ります。
屋根の構造的な制約
屋根の構造によっては、補強が必要になる場合や、そもそもパネルを設置できない部分が存在します。例えば、以下のようなケースでは設置面積が制限される可能性があります。
- 屋根の勾配が急すぎる場合(施工や固定が難しくなる)
- 屋根材の強度が不足している場合(追加の補強工事が必要)
- 屋根の形状が複雑な場合(平坦でない部分には設置しにくい)
そのため、太陽光パネルの設置計画を立てる際は、事前の屋根診断を行い、構造的な強度や適用可能な設置方法を確認することが重要ですが、新築から現在に至るまでの建物の経過年数やその建物の耐荷重を加味して設置されるケースが多いような気がします。
このように、屋根全体に太陽光パネルを敷き詰めるのではなく、安全性・発電効率・メンテナンス性を考慮した上で、最適な設置面積を算出することが求められます。
設置計画の段階でシミュレーションを行い、最も効果的なレイアウトを決定することが重要です。
令和5年(2023年)3月20日から、小規模事業用電気工作物(太陽電池:10kW 以上50kW 未満、風力:20kW 未満)も、技術基準適合維持義務の対象となり、これまで一部保安規制の対象外だった基礎情報の届出や、使用前自己確認も義務化となりました。
〈発電出力別〉必要な設置面積と日射量はどのくらい?

当社が構えている東京都品川区大井に折半屋根がありその場所に設置した場合を仮定して、簡易図面と日射量シミュレーションを作成してみました。
採用パネルは、当社の折板屋根用で一番引き合いの多い「JUMAO NEW ENERGY製490W/枚」で計算。
〈条件〉※ストレッチをかけた状態の当社シミュレーションソフトを使用、
- 設置場所:東京都品川区大井
- 水の勾配を若干考慮し傾斜角(度):1度
当社システム上、0度入力ができないため若干の水勾配を考慮し傾斜角1度 - 屋根面の向き:真南(近隣の影は考慮なし)
- 太陽光設置可能面積:考慮
- 屋上の設備の有無:無

〈太陽光発電出力50kwレベル〉設置可能面積370㎡(20m×18.5m)~
設置面積は370㎡から必要です。仮に屋上に設備等があれば減算していきます。また、元請業者様による現地調査により、前後する可能性もあります。
太陽光発電出力54.88kwの場合:年間予測発電量54,506.46kwh


〈太陽光発電出力100kwレベル〉設置可能面積750㎡(50 m×15m)~
設置面積は750 ㎡から必要です。
太陽光発電出力102.9kwの場合:年間予測発電量102,199.70kwh


〈太陽光発電出力300kwレベル〉設置可能面積2,280㎡(20m×18.5m)~
設置面積は2,280㎡から必要です。
太陽光発電出力305.76kwの場合:年間予測発電量303,679.kwh


東にもパネルを設置しましたが、パネルの傾斜角が1度のため日射量は他の発電出力と変わりません。
〈太陽光発電出力500kwレベル〉設置可能面積3,780㎡(50m×12.6m×6棟 )
設置面積は3,780㎡から必要です。
太陽光発電出力517.44kwの場合:年間予測発電量513,918.50kwh


障害物がない場合、おおよそ屋根の面積×75%前後が太陽光設置可能面積になります。上記に記載した設置可能面積をもとに、この折板屋根はこのぐらい太陽光パネルが設置できるだろうと目安になりますので、ご参考ください。
まとめ

折板屋根に太陽光パネルを設置することで、電気料金の削減や環境負荷の軽減が期待できます。ただし、屋根の強度や防水対策、気象条件に応じた設計など、慎重な検討が必要です。
本記事で紹介した条件をしっかり確認し、専門の施工業者と相談しながら、最適な設置計画を立てましょう。
太陽光パネルの導入を検討中する際は、まずはシミュレーションを行い、自社に最適なプランを見つけることが出来ますので、是非、当社までお問い合わせください。他社メーカーパネルも取扱いしております。