オンサイトPPAを社内に説明するとき、ほぼ確実に聞かれる質問があります。
「その事業者は電気を売っているのだから、免許が必要ではないのか?」
この問いに即答できないと、法務や経営層で止まります。
結論はシンプルです。
オンサイトPPAは、一律の“特別な免許”が必要なわけではない。
ただし、事業内容によって届出や登録が変わる。
順を追って整理します。
まず前提:電気事業はどう分類されているか

現在の電気事業法では、主に次の区分があります。
- 発電事業
- 小売電気事業
- 一般送配電事業(今回は関係薄)
実務で問題になるのは、発電事業の届出と小売電気事業の登録です。
ポイントがここです。
「電気を作ること」と「系統を通じて不特定の需要家に売ること」は法的には別の行為
この違いを押さえると整理しやすくなります。
オンサイトPPAの基本構造を再確認
典型的なオンサイトPPAは、
- 発電設備は需要家の敷地内
- 発電事業者が所有
- その施設内だけに電気を供給
- 送配電網を通らない
つまり、「閉じた敷地内で完結する供給」です。
ここが制度上の分岐点になります。

小売電気事業の登録は必要か
小売電気事業とは、
一般の需要家に対して、送配電網を使って電気を供給する事業
を指します。
オンサイトPPAで、「同一構内」「特定の1需要家のみ」「系統を介さない」という形であれば、
通常の「小売電気事業登録」は不要と整理されるのが一般的です。
つまり、“電気を売っている=小売登録が必要”ではありません。
系統小売かどうかが本質です。
発電事業の届出はどうか

では完全に何も不要かというと、そうではありません。
一定規模以上の発電設備(出力要件あり)を設置する場合、
「発電事業」としての届出が必要になります。
ここで重要なのは、「免許制ではない」「登録制でもない」「基本は届出制」
という点です。
したがって、「特別な電気販売免許が必要」という理解は正確ではありません。
話が変わるのは“余剰電力”がある場合
オンサイトPPAでも、発電量が使用量を上回るケースがあります。
この余剰電力をどう扱うかで制度整理が変わります。
ケース①:余剰は系統に売らない
構内完結、小売登録不要
→ 規模に応じて、必ず発電事業届出
〈設備ごとの保安規制・届出〉
①出力10kw以上の太陽光:「小規模事業用電気工作物」として
「基礎情報届出」が義務。
➁出力50kw以上2,000kw未満:「事業用電気工作物」として
・保安規定の届出
・主任者技術者の選任
・使用前自己確認(500kW以上 2,000kW未満は義務)
などが必要。
③出力2,000kw以上:工事計画届出や使用前安全管理審査など、
より重い規制がかかる。
オンサイトPPAの場合、設備の「設置者」はPPA事業者なので、
これらの保安関連届出はPPA事業者が行います。
ケース②:余剰を「既存小売りに卸売する」
構内供給+余剰分を既存の小売電気事業者と相対契約
→小売登録不要
発電設備に関する上記各種届出と小売事業者との売電契約(相対契約)が必要
ケース③:余剰を「市場売電(JEPX)する」
発電事業として市場売電する
→ 小売登録は通常不要
JEPXで「直接売る」場合、PPA事業者は「JPEX取引会員」として登録が必要。
インバランス精算や信用リスク管理の観点から、アグリゲーターに売電を委託する
方法もあり、この場合は、自社でJPEX取引会員になる必要がない。
※アグリゲーター(JEPX会員)間:売買契約・委託契約
直接売る場合には、需給管理と運用ができるのがキーです。
ケース③:余剰を「他の最終需要家にも売りたい」
→ 小売電気事業登録要(自己託送除く)
送配電ネットワーク経由で他拠点・他社に売る場合には、
小売電気事業者の登録が必要。
※直接型オフサイトPPA(発電事業者→需要家をダイレクトでつなぐ)は、
原則認められず、小売電気事業者が介在したスキームが求められる。
オンサイトPPAは「無資格でできる」は正確か

ご質問の理解、
他の需要家・市場売電しなければ無資格でよい
これは方向性としては近いですが、
厳密には次のように整理できます。
- 小売電気事業の登録は通常不要
- ただし一定規模なら発電事業の届出は必要
- 市場売電は卸扱い(自社運用:JEPX取引会員要)
- 最終需要家販売は小売登録対象になり得る
したがって、“完全無資格”というより、該当区分に応じた整理が必要
というのが実務的な答えです。
社内説明用にまとめると
総務・設備担当が社内に説明する際の簡易整理は次の通りです。
- 敷地内完結か
- 系統を使うかor使わないのか
- 余剰の電気を誰に売るかor売らないのか
- 発電規模はいくつか
この4点が分かれば、PPAの制度区分はほぼ説明できます。
なぜこの論点が重要か

制度誤解があると、
- 事業者の信頼性に疑問が出る
- 契約承認が止まる
- 法務確認が長期化する
PPAは設備導入ではなく、契約設計ビジネスです。
制度区分を理解しておくことで、無用な社内混乱を避けられます。
まとめ
オンサイトPPA事業者に、特別な「販売免許」が
一律に必要なわけではありません。
ただし、「発電規模」「系統利用の有無」「売電先」によって、
- ・発電事業届出
- ・小売電気事業登録
- ・卸供給の整理
が変わります。
重要なのは、「電気を作るのか」「系統で売るのか」
「誰に売るのか」この3点です。
制度を構造で理解すれば、判断は難しくありません。