多くの医療機関が活用しているMS法人
近年、多くの医療機関がMS法人（メディカル・サービス法人）を設立しています。しかし、MS法人とは何か、どのような目的で設立されるのかを正しく理解している方は意外と少ないかもしれません。
本記事では、MS法人の概要や医療法人との違い、設立のメリット・デメリット、具体的な活用事例、そして設立時の注意点について詳しく解説します。
MS法人とは？
MS法人の定義
MS法人（Medical Service法人）とは、医療機関が医療行為以外の業務を担うために設立する法人のことを指します。例えば、医療機器のリース、事務業務の代行、医療機関の清掃、広告・マーケティング、物品販売などの業務を行います。
医療法人との違い
| 項目 | 医療法人 | MS法人 |
|---|---|---|
| 主な業務 | 医療行為 | 医療行為以外（事務・設備管理・物販など） |
| 営利性 | 非営利 | 営利活動が可能 |
| 設立の目的 | 医療提供 | 経営の効率化・収益の拡大 |
医療法人は、医療行為を提供することが目的であり、営利活動には制限があります。一方、MS法人は、医療機関の経営をサポートすることを目的とし、営利活動が可能です。
MS法人設立の目的とメリット
所得分散による節税効果
医療法人が直接行えない営利活動をMS法人で運営することで、医療法人とMS法人間で所得を分散できます。これにより、税負担の軽減が可能になります。
診療と経営の分離
MS法人を設立することで、医療法人は診療に専念し、経営や事務業務はMS法人が担当するという役割分担ができます。これにより、医療の質の向上や業務効率化が期待できます。
規制の回避と事業の多角化
医療法人では、法律上制限がある事業が多いため、MS法人を活用することで規制を回避しながら新たな事業展開が可能になります。例えば、化粧品販売や医療機器のレンタル事業などを行えます。
資金調達の柔軟性
MS法人は、株式発行や社債発行による資金調達が可能です。これにより、新規事業の展開や設備投資のための資金を調達しやすくなります。
相続・事業承継対策
医療法人は相続が難しいですが、MS法人であれば家族や親族に事業を承継しやすくなります。これにより、医療機関のスムーズな世代交代が可能となります。
MS法人設立のデメリット
設立・運営コストの増加
MS法人の設立には、法人登記費用や税理士・司法書士への報酬などのコストがかかります。また、法人運営には税務申告や経理業務が必要となり、追加の管理コストが発生します。
税務リスクの発生
医療法人とMS法人間の取引が税務署に適正と認められない場合、節税目的の取引とみなされ、追徴課税のリスクがあります。特に、MS法人への利益移転が不適切と判断されると、問題となる可能性があります。
役員の兼務制限
医療法では、医療法人とMS法人の役員の兼務が原則として禁止されています。そのため、適切な経営体制を構築する必要があります。
MS法人の具体的な活用事例
医療機器のリース業務
MS法人が医療機器を購入し、医療法人にリースすることで、資産管理を最適化し、コストの平準化を図ることができます。
不動産賃貸業務
医療機関の土地や建物をMS法人が所有し、医療法人に賃貸することで、財務の健全化を図りながら資産管理を行えます。
物品販売・医療関連事業
医療法人が直接行えない化粧品やサプリメントの販売をMS法人が担うことで、患者向けサービスを拡充しながら収益の多様化が可能になります。
MS法人設立時の注意点
法的手続きの遵守
MS法人を設立する際には、会社法・税法・医療法などの各種法令を遵守する必要があります。特に、医療法人とMS法人間の契約内容や取引の適正性には細心の注意を払う必要があります。
適切な業務範囲の設定
MS法人の業務範囲が医療行為に関わると、違法行為とみなされる可能性があります。そのため、適切な業務範囲を設定することが重要です。
税務リスクへの対応
税務当局の監視が強化されているため、MS法人を利用した過度な節税策はリスクを伴います。専門家と相談しながら適正な運営を行うことが求められます。
まとめ
MS法人は、医療機関の経営を効率化し、節税や収益の多角化を実現する有効な手段です。しかし、適正な運営を行わなければ税務リスクや法的リスクが発生する可能性もあるため、専門家のアドバイスを受けながら慎重に設立・運営することが重要です。
MS法人の活用を検討する際には、事前に十分なリサーチと計画を行い、最適な形での導入を目指しましょう。
