JC-STARについて、
- 制度の目的
- 系統用蓄電池との関係
- 義務か任意か、誰が気にすべきか
ここまで整理してきた上で、次に必ず出てくるのがこの疑問です。
「では、実際に機器や仕様を見るとき、何をどう確認すればいいのか」
この段階で多いのが、
- 仕様書を見ても どこが論点なのか分からない
- 「JC-STAR対応」という言葉の 受け止め方が分からない
- 聞きすぎているのか、聞かなさすぎなのか 判断できない
という状態です。
この記事では、JC-STARを“前提知識”として持った上で、
系統用蓄電池の機器仕様をどう整理して見ればいいのか
を考え方ベースで整理します。
前提整理:「JC-STAR対応機器」を探す話ではない

最初に重要な前提を置きます。
この段階でやるべきことは、
「JC-STAR認証済みの機器を探すこと」ではありません。
JC-STARは、
- 製品の優劣を決める制度
- 認証がないと使えない制度
ではなく、
セキュリティ要件をどう考えているかを説明・比較するための枠組みです。
したがって、機器選定において重要なのは、「その機器・システムは、
どのレイヤーで、何を前提に設計されているか」
を整理できるかどうかです。
系統用蓄電池の仕様は「層」で分けて見る
JC-STARを前提に考えると、系統用蓄電池の仕様は
一枚の仕様書としてではなく、層(レイヤー)で分けて見る
方が整理しやすくなります。
大きく分けると、次の4層です。
- 電池・電力機器層
- 制御・EMS層
- 通信・ネットワーク層
- 運用・管理層
JC-STARと直接関係してくるのは、主に後半の3層 です。
電池・PCSは「主戦場」ではない

まず、電池やPCSについて。
ここで見られるのは基本的に、「電気的安全性」「規格適合」「性能・耐久」
であり、サイバーセキュリティの中心論点になることは多くありません。
もちろん、制御インターフェースや設定変更手段がある場合は別ですが、
JC-STARの文脈での主戦場はここではない、という整理をしておくと
混乱が減ります。
EMS・制御システムは仕様整理の核心
最も重要なのが、EMSや制御ソフトの領域です。
ここでは、
- 出力制御のロジック
- 外部指令の受け方
- ソフトウェア更新の方法
- 権限管理や操作範囲
といった点が、「セキュリティ要件としてどう設計されているか」に直結します。
機器仕様を見るときは、
- EMSはどこに実装されているのか
- クラウドか、オンプレか
- 誰が管理者権限を持つ前提か
といった 前提条件を言語化できるか が重要です。
通信仕様は「ある・ない」ではなく「どう使うか」
通信についても、「通信があるからダメ」「インターネット接続だから危険」
という話ではありません。
見るべきなのは、
- 常時接続か、必要時のみか
- 一方向か、双方向か
- 制御まで含むのか、監視のみか
といった 使い方の前提 です。
JC-STARは、通信を否定する制度ではなく、
通信を前提としたときの整理軸 を提供する制度です。
運用・管理仕様は「機器仕様書に書かれていない部分」

意外と見落とされがちなのが、運用・管理のレイヤーです。
例えば、
- 誰がログを管理するのか
- 障害時の対応権限は誰にあるのか
- セキュリティ更新は誰の責任か
これらは、機器仕様書ではなく、運用前提として決まる部分 です。
JC-STARを前提に考えると、「機器が何をしてくれるか」だけでなく、
「運用で何を担保する設計なのか」を切り分けて考える必要があります。
「JC-STAR対応」という言葉の受け止め方
機器選定の場面で、「JC-STAR対応を想定しています」「将来的に対応可能です」
といった表現を目にすることがあります。
ここで大切なのは、
YES/NOで受け取らないこと です。
確認すべきなのは、
- どの構成要素についての話か
- 機器仕様なのか、運用前提なのか
- 現在の話か、将来構想か
この3点です。
JC-STARは、「一言で済ませられる話ではない制度」
だからこそ、仕様整理の質問の仕方が重要になります。
発注者・検討者が持つべきスタンス

この段階での理想的なスタンスは、
- JC-STARに完全対応しているかを問うのではなく、
- どういう前提で設計・運用するのかを説明してもらう
ことです。
それができれば、
- 自社のリスク許容度
- 事業規模
- 運用体制
に照らして、過不足のない判断 ができるようになります。
まとめ:JC-STARは仕様を縛る制度ではなく、仕様を整理する視点
JC-STARを前提にした機器選定とは、
新しいチェック項目を増やすことではありません。
- 仕様を層で分ける
- 機器と運用を切り分ける
- 前提条件を言葉にする
この整理ができれば、制度に振り回されず、
自分たちの事業に合った仕様判断 が可能になります。