JC-STARという制度の概要は分かってきたものの、
次に多くの検討者が引っかかるのが、
- 「系統用蓄電池“全部”が対象なのか」
- 「設備のどこを見られる話なのか」
- 「機器の話なのか、運用の話なのか」
という点です。
ここを曖昧なままにすると、必要以上に身構える か、
逆に全く関係ないと誤解する か、どちらかに振れやすくなります。
この整理記事では、JC-STARが 系統用蓄電池のどこを論点にし
得る制度なのか を、構造ベースで整理します。
まず前提:蓄電池そのものが評価されるわけではない

最初に押さえておきたいのは、JC-STARは 電池セルや筐体の安全性
評価制度ではない という点です。
つまり、
- リチウムイオン電池の性能
- 発火・安全規格
- 容量や劣化特性
といった ハード単体の話 を評価する制度ではありません。
JC-STARが見ているのは、「つながることで生じるリスクに、
どう向き合っているか」という点です。
この前提を置くと、対象になり得る領域が自然と絞られてきます。
対象になりやすいのは「制御・通信・管理」の部分
系統用蓄電池を構成要素で分解すると、
大きく次のように整理できます。
- 電池(セル・モジュール)
- PCS(パワーコンディショナ)
- 制御装置・制御ソフト
- EMS(エネルギーマネジメントシステム)
- 通信回線・ネットワーク
- 遠隔監視・運用管理システム
この中で、JC-STARの議論と接点を持ちやすいのは後半の領域 です。
特にポイントになるのは、
- 外部ネットワークと接続されるか
- 遠隔から制御・更新・操作が可能か
- 複数設備を一元管理しているか
といった要素です。
具体的に論点になりやすい構成要素

EMS(エネルギーマネジメントシステム)
系統用蓄電池では、
EMSが出力制御・市場対応・需給調整などの中枢を担います。
- 外部と通信している
- 制御判断を集中管理している
- ソフトウェア更新がある
こうした性質から、「サイバーセキュリティをどう設計しているか」
が最も意識されやすい領域です。
JC-STARの考え方は、こうしたシステムが「どんな前提で作られ、
どこまで対策されているか」を整理・可視化する方向にあります。
遠隔監視・制御システム
多くの系統用蓄電池は、現地に常駐せず、遠隔で
状態監視・操作を行います。
ここでは、
- 誰がアクセスできるのか
- 不正アクセスをどう防いでいるのか
- 操作ログや権限管理はどうなっているのか
といった点が論点になります。
これは「危険だからダメ」という話ではなく、
事業インフラとして、前提条件を明確にしておく必要がある
という整理です。
通信回線・ネットワーク構成
系統用蓄電池は、
- インターネット
- 専用線
- VPN
など、さまざまな形で外部と接続されます。
JC-STARの文脈では、「どのような接続形態を前提としているか」
「想定されるリスクをどう分離・制御しているか」
が評価の軸になり得ます。
「設備全体」が一律に対象になるわけではない
ここで誤解されやすいのが、「系統用蓄電池=丸ごとJC-STAR対応が必要」
というイメージです。
実際には、
- どの構成要素が
- どのレベルで
- ネットワークと関わっているか
によって、関係の深さは大きく変わる と考えられます。
つまり、「完全に閉じた構成」「限定的な通信のみ」
「外部制御を前提としない運用」であれば、
制度との距離感も変わってきます。
JC-STARは「すべてを同じ基準で縛る制度」ではなく、
比較・整理のための枠組み と理解する方が現実的です。
事業者がこの段階で意識すべきこと
この整理している段階で、結論を出す必要はありません。
意識しておきたいのは、
- 自分が検討している系統用蓄電池は、どこまで外部とつながる設計なのか
- 制御・管理は、誰が、どのレイヤーで担うのか
- 「セキュリティ」は、仕様なのか、運用なのか
こうした問いを言語化できる状態になること です。
それができて初めて、JC-STARを「対応すべき制度」なのか
「理解しておくべき前提条件」なのか判断できるようになります。
まとめ:次に考える視点

系統用蓄電池において、JC-STARが関係してくる可能性があるのは、
- 電池そのものではなく
- 制御・通信・管理のレイヤー
この整理ができれば、制度に対する過剰な不安も、
過小評価も避けられます。
次の段階では、
- JC-STARは義務なのか任意なのか
- 誰が、どの立場で意識すべき制度なのか
- 機器メーカー・事業者・運用者の役割の違い
といった 判断の分岐点 を整理する必要があります。
