普通充電6kWを入れると何が変わるのか、契約電力の現実まで考える

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普通充電6kWを入れると何が変わるのか

EV充電インフラの検討が進む中で、最近増えているのが

  • 「普通充電は3kWのままで本当に足りるのか」
  • 「6kWにすると、何が良くなり、何が問題になるのか」
  • 「契約電力や基本料金が上がるリスクは現実的にどれくらいか」

といった、一歩踏み込んだ悩みです。

急速充電のように分かりやすい違いがあるわけではない普通充電ですが、6kWを選ぶかどうかで、
運用の自由度・将来対応力・電力契約の考え方は確実に変わります。

本記事では、「6kWを入れると何が変わるのか」を、制度論や理想論ではなく、契約電力という現実まで含めて整理します。

よくある誤解:「国が6kWを標準に決めた?」

まず整理しておきたいのは、「国が普通充電器を6kWに統一する方針を出した」という理解は正確ではありません。

経済産業省が公表している
「充電インフラ整備促進に向けた指針」「充電インフラ整備に関する検討会」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/charging_infrastructure/index.html)
では、普通充電器は一貫して10kW未満、主に3〜6kWというレンジで整理されています。

つまり、普通充電=6kW固定、という公式整理はされていません。ただ、利用者利便性やEVの大容量化を背景に、普通充電の高出力化を評価する議論が増えていることが分かります。

この「明文化はされていないが、方向性は感じられる」という曖昧さが、現場での迷いを生んでいます。

基本整理:3kWと6kWの違いは何か

普通充電器の出力差は、単純に充電スピードの違いとして現れます。近年のEVは、60〜70kWhクラスのバッテリー容量を持つ車種も珍しくありません。


この前提で考えると、3kW充電ではフル充電まで20時間以上かかるケースがあります。

一方、6kWであれば、同じ駐車時間でも約半分の時間で同じ電力量を充電できます。夜間や長時間滞在を前提とする普通充電において、この差は無視できません。

この点が、「最低でも6kWは欲しい」という利用者側の声につながっています。

なぜ6kWが注目され始めているのか

6kWが評価される背景には、いくつかの構造的な理由があります。

EVの大容量化

車両側のバッテリー容量が増えれば、充電インフラ側の前提も変わります。
「一晩である程度入る」ことが、普通充電にも求められるようになってきました。

補助金制度の設計

たとえば
クリーンエネルギー自動車・インフラ導入補助金(CEV補助金)
https://www.cev-pc.or.jp/hojo/)
では、普通充電器でも出力が高い区分の方が補助上限額が高く設定されています。

これは「6kWを標準化する」という宣言ではありませんが、制度設計として6kWを選びやすくしていることは事実です。

充電事業者の戦略

EV充電事業者や業界団体の技術解説資料を見ると、普通充電の価値を高める手段として6kWを位置づける考え方が増えているそうです。

利用者満足度や回転率を意識した、事業的な判断とも言えるでしょう。

実務的な注意点:6kWは万能ではない

ただし、6kWには明確な注意点もあります。

6kW普通充電は30Aクラスの電流が必要となり、既存建物では幹線容量や契約電力が制約になる場合があります。特に複数台を同時設置する場合、設備増強コストが一気に跳ね上がるケースもあります。

そのため、「6kWの方が良いから一律に6kW」という判断は危険であり、
滞在時間が長く、回転率を重視しない場所では、3kWの方が合理的な場合も十分にあります。

ケース別整理:6kWを設置した場合のメリット・デメリット

ここからは、実務でよく想定される「事務所」「戸建て」「分譲マンション」の3ケースについて、6kW普通充電器を設置した場合の考え方を整理します。

事務所・事業所に6kWを設置する場合

メリット

  • 社用車・来客EVの充電時間を短縮でき、業務時間内での実用性が高まる
  • 3kWでは“ほぼ入らない”短時間滞在でも、一定量の充電が期待できる
  • 「EV対応している会社」という対外的な評価につながりやすい

デメリット・注意点

  • 同時使用が重なると契約電力を押し上げやすい
  • 既存の動力・空調・IT設備とピークが重なると、基本料金見直しの対象になりやすい
  • 台数を増やす前提では、初期の電源計画が重要

事務所の場合、昼間ピークと重なりやすい点が最大のリスクです。

戸建て住宅に6kWを設置する場合

メリット

  • 夜間の限られた時間でも実用的な充電量を確保しやすい
  • EVの大容量化に対応しやすく、将来の車両変更にも余裕がある
  • 太陽光・蓄電池と組み合わせた際の運用幅が広がる

デメリット・注意点

  • 分電盤・引込容量の確認が必須
  • オール電化住宅では、給湯・調理と重なる時間帯に注意が必要

戸建ての場合は、契約アンペアや主幹容量の見直しが不要かを事前に確認することが重要です。

分譲マンションに6kWを設置する場合

メリット

  • 利用者満足度が高く、3kWとの差が体感されやすい
  • 充電待ち時間の短縮につながり、共用設備としての価値が上がる

デメリット・注意点

  • 幹線容量・変圧器容量がボトルネックになりやすい
  • 将来的な台数増設を考えると、6kW一択はリスクになる場合がある
  • 管理組合合意形成が難しく、コスト説明が複雑になりがち

マンションでは、全台6kWにしない設計(3kW+6kW混在)も現実的な選択肢です。

既に省エネ対策をしている場合はどう考えるか

既にLED化や高効率空調、デマンド監視などの省エネ対策を進めている事業所では、「余力があるから6kWを入れられる」と考えがちです。

ただし注意したいのは、省エネ対策は平均使用電力量を下げる施策であり、契約電力(最大需要電力)とは必ずしも一致しない点です。

ピーク時間帯に6kWが重なると、省エネ対策済みでも基本料金見直しの対象になる可能性は残ります。

契約電力の基本料金を見直さないための実務的対策

6kW導入時に検討される代表的な対策には、以下があります。

  • 充電時間制御:空調や生産設備のピーク時間帯を避けて充電させる設定
  • 出力制御・デマンド連動:需要電力が高まると自動で充電出力を絞る仕組み
  • 同時使用制限:複数台設置時に、最大同時充電数を制御する設計
  • 既存省エネ設備との連携:BEMS等と連動し、建物全体で負荷を管理する運用

これらは「6kWを入れるかどうか」よりも、「どう使うか」の設計に近い話です。

加えて、事務所・事業所など一定規模以上の建物では、電力契約の制度そのものを活用する選択肢が検討できる場合もあります。

  • 引き込み特例制度
     EV充電設備など特定用途の負荷について、既存の主契約とは別に受電・契約できる制度で、条件次第ではEV充電の負荷を主契約の最大需要電力算定から切り離せる可能性があります。
  • 別引き込み(専用回線)による受電
     EV充電用に別系統で引き込みを行い、建物本体の契約電力と分けて管理する考え方です。設備条件や電力会社との協議が前提になりますが、将来的にEV台数が増える拠点では検討されるケースがあります。

これらの制度はすべての建物で使えるわけではありませんが、「最初から契約電力を上げる」前に、運用制御+制度活用という組み合わせで回避できないかを検討する余地がある、という点は押さえておきたいポイントです。

今後の現実的な方向性:ハイブリッド型

これらを踏まえると、日本の普通充電インフラは、「3kWを広く薄く整備する場所」「利用価値が高い拠点に6kWを重点配置する場所」というハイブリッド型で進んでいく可能性が高いと考えられます。

政策的にも「6kW一本足」に振り切る段階ではなく、柔軟性を残したまま高出力化を後押ししている、という読み方が妥当でしょう。

まとめ:6kWは「前提」ではなく「選択肢として重くなってきた」

普通充電器における6kWは、すでに主流とは言えませんが、「将来を考えると無視できない選択肢」になりつつあります。重要なのは、制度やトレンドに引っ張られることではなく、設置場所の使われ方・滞在時間・将来のEV構成を前提に考えることです。

6kWは方向性の一つであり、答えではありません。この整理ができているかどうかが、後悔しない判断につながります。

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この記事を書いた人

永輝商事ブログはじめました。環境とエネルギーなどの情報をみなさんにお届け致します。また、プラスになる情報がありましたらご紹介させて頂きますので、ぜひご覧になってください。

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