見た目は似ているのに、なぜ話が噛み合わないのか
EV充電器を調べていると、
- 住宅用EV充電器
- 業務用EV充電器(企業・施設向け)
という区分に出会います。
一見すると、 「同じ普通充電器では?」 「出力が6kWかどうかの違いでは?」 と思われがちです。
しかし、実際の導入検討では
- 話が噛み合わない
- 前提条件が違う
- 同じ充電器でも評価が真逆になる
といったことがよく起こります。
これは、機器の違いというより“使われ方の前提”が違うためです。 本記事では、住宅用と業務用EV充電器の違いを 性能比較ではなく、 考え方の違いとして整理します。

よくある誤解|住宅用と業務用は別物の設備なのか

まず整理しておきたいのは、
住宅用EV充電器と業務用EV充電器は、 まったく別の機械なのか
という点です。
答えは 「必ずしもそうではない」です。
実際には、
- 同じAC普通充電器が
- 住宅にも、企業にも使われている
というケースは珍しくありません。
ではなぜ 「住宅用」「業務用」と分けて語られるのか。
理由は、 充電器そのものではなく、置かれる環境と役割が違うからです。
違いの本質①|充電の目的が違う
住宅用EV充電器の前提
住宅用EV充電の目的は、非常にシンプルです。
- 毎日少しずつ充電する
- 翌日の移動に困らなければ成立
- 夜間や自宅滞在中が中心
つまり、 生活リズムに溶け込む充電が前提です。
充電速度よりも、用途の中心は 「置いておけば勝手に溜まっている」ことにあります。
業務用EV充電器の前提
一方、業務用EV充電では、 目的がより多様になります。
- 業務を止めないための充電
- 回転率を意識した充電
- 複数人・複数車両が使う前提
ここでは、 充電が業務フローの一部になります。
同じ6kWの普通充電であっても、 「誰が、いつ、どれくらい使うか」が 最初から違います。
違いの本質②|電力の考え方が違う

住宅用の場合
住宅では、
- 契約電力が比較的小さい
- 同時使用の想定が限定的
- EV充電は1台が基本
という前提があります。
多少時間がかかっても、 夜間にゆっくり充電できれば問題になりません。
業務用の場合
業務用EV充電では、
- 複数台の同時充電
- 他設備との電力競合
- 将来の台数増加
が常に視野に入ります。
そのため、「出力を抑える設計」「同時充電の制御」「拠点全体での電力管理」といった設計の考え方が重要になります。
ここが、 住宅用と業務用で 「同じ充電器なのに評価が変わる」理由です。
違いの本質③|使う人が違う
住宅用EV充電器
- 使うのは基本的に家族のみ
- ルールは暗黙的
- トラブルが起きても自己完結
操作性や見た目は重視されますが、 運用ルールを細かく決める必要はありません。
業務用EV充電器
- 社員、来客、委託業者など複数人
- 利用ルールの明確化が必要
- 使われ方が想定外になることもある
そのため、「誰が使ったか」「いつ使われたか」「使いすぎていないか」といった視点が、 充電器選定に影響します。
同じ普通充電器でも評価が分かれる理由
ここまで整理すると、
住宅用と業務用の違いは 充電器の性能ではなく、 前提条件の違い
だということが見えてきます。
例えば、
- 住宅では「十分」な6kW
- 業務では「足りない」6kW
という評価が生まれるのも、 使われ方が違うからです。
ABBのTerra ACのように、 業務用文脈で語られる普通充電器が 住宅でも使われることがあるのは、 この前提が重なる部分があるためです。

住宅用と業務用を分けて考えるべき判断軸

ここで、 住宅用/業務用の違いを 表で整理します。
| 視点 | 住宅用EV充電 | 業務用EV充電 |
|---|---|---|
| 充電の目的 | 日常補充 | 業務維持・回転 |
| 利用者 | 家族 | 複数人・複数車両 |
| 同時使用 | ほぼなし | 想定が必要 |
| 電力設計 | シンプル | 拠点全体で検討 |
| 将来変化 | 小さい | 大きい |
この違いを整理せずに 「住宅用だから安い」「業務用だから高い」と考えると、 判断を誤りやすくなります。
まとめ|同じようで違う、違うようで同じ
住宅用EV充電器と業務用EV充電器の違いは、「機械の種類」「出力の大小」だけでは説明できません。
違いの正体は、
- 充電の目的
- 電力の前提
- 使われ方の想定
にあります。
そのため、 同じ普通充電器が 住宅でも、企業でも使われることがある一方で、 設計や評価の仕方はまったく変わるのです。
EV充電を検討する際は、 「これは住宅用か、業務用か」ではなく、
この充電は、 誰の、どんな行動を支えるのか
という視点で整理することが、 判断を誤らせない近道になります。