太陽光発電義務化をご存じでしょうか?最近では東京都の新築住宅への太陽光設置義務化がテレビのニュースやSNSの記事などでよく取り上げられているのでそれをきっかけに知った方は多いと思います。そんな東京都の太陽光設置義務化ですが、都民の意見は賛否両論のようです。反対意見として「都民の費用負担が増えるのではないか」「経年後の廃棄問題はどうするのか」といったものが多いのが現状です。今回はそんな賛否両論の太陽光設置義務化について、少しでも不安や疑問を解消できればと思い記事を書いてみました。
太陽光発電の義務化とは -義務化の背景-
太陽光発電の義務化とは、政府の掲げる脱炭素化社会の実現に向けて国または地方自治体が新築建築物に対して太陽光発電システムの設置を義務化する制度です。
脱炭素化社会の実現とは?
脱炭素化社会の実現は、世界中の国々が一丸となって取り組んでいる大きな目標です。最終的な目標は「CO2をはじめとした温室効果ガスの排出量ゼロにすること」です。ここでの排出量ゼロというのは、森林保全活動や植林などによる吸収量を差し引いて全体としてをゼロにする(カーボンニュートラル)ということです。 日本での脱炭素化社会の実現には様々な課題があり、その課題を解決すべく日々取り組みが行われています。その取り組みの内の一つとして挙げられるのが、太陽光発電や風力発電、バイオマス発電といった環境への影響が少ない再生可能エネルギーの普及です。 現在日本ではエネルギー普及の約4分の3を大量の温室効果ガス排出に繋がる火力発電に頼っています。また、そのほとんどの燃料を海外からの輸入で賄っているため、日本のエネルギー自給率は10%台と非常に低いのが現状です。 |
そんな脱炭素化社会の実現に向けた取り組みとして始まる本制度ですが、政府は本制度のにおいて以下のような目標を掲げています。
【2030年までの目標】 新築戸建住宅の6割において太陽光発電設備が導入される |
【2050年までの目標】 導入が合理的な住宅・建築物における太陽光発電設備等の再生可能エネルギー導入が一般的になる |
現在、新築における太陽光発電の導入率は1割~2割ほどと言われています。この1割~2割の導入率を2030年には6割へ上げ、2050年には「住宅・建築物には基本的に太陽光を設置するもの」という認識にするということです。
太陽光設置義務化の対象地域
現状、2030年以降の住宅・建築物における太陽光発電導入の一般化に向けた先駆けとして太陽光設置義務化に取り組んでいる国内自治体は以下の通りです。
●京都府京都市
東京都の義務化で一躍話題となりましたが、実は太陽光発電義務化に国内で一番初めに取り組んだのは京都府京都市です。2015年に「京都府再生可能エネルギーなどの促進に関する条例」を制定し、延床面積2000㎡以上の建築物を対象に太陽光発電の設置を義務付けました。更に2021年に条例改正を行い、延床面積300㎡以上の建築物に対しても太陽光の設置を義務付けました。
対象物件 | 新築建築物 延床面積300㎡以上 |
義務化対象者 | ハウスメーカー等の事業者、または都から認可を受けた事業者 |
●群馬県
2022年3月に延床面積2000㎡以上建築物に対して太陽光設置を義務付ける条例を群馬県議会が可決しました。2023年4月1日から施行予定です。
対象物件 | 新築建築物 延床面積2000㎡以上 |
義務化対象者 | ハウスメーカー等の事業者、または都から認可を受けた事業者 |
●東京都
東京都では2022年9月に新築住宅への太陽光発電義務化の検討を発表し、同年12月に東京都議会によって可決されました。京都府と群馬県の設置義務化は300㎡・2000㎡以上と店舗や商業施設向けの制度であったため、それほど認知されませんでした。東京都は国内最初の2000㎡未満を対象物件とした、新築住宅メインの設置義務化制度になります。現在は本制度の2025年4月始動に向けて条例制定・認知活動などが進んでいます。
対象物件 | 新築建築物 延床面積2000㎡未満 |
義務化対象者 | ハウスメーカー等の事業者、または都から認可を受けた事業者 ⇒都内大手住宅メーカー約50社ほどが対象の見込み |
●神奈川県川崎市(未確定)
川崎市は現在条例制定を検討中の段階です。2025年度「再エネ義務・支援等事業」といった太陽光発電義務化の条例政令に向けて動き出しています。現状の検討案ではこれまでの設置義務化制度を組み込んだ内容となっています。
対象物件 | 延床面積2000㎡以上の新築建築物 延床面積2000㎡未満の新築建築物 |
義務化対象者 | 延床面積2000㎡以上の新築建築物 ⇒建築主(購入者) 延床面積2000㎡未満の新築建築物 ⇒ハウスメーカー等の事業者、または都から認可を受けた事業者 |
太陽光発電義務化は日本だけでなく海外諸国でも進んでいます。脱炭素化社会の実現において太陽光発電が世界的に期待されていることです。
●米国カリフォルニア州
●米国ニューヨーク
●EU
●ドイツ
参照元:太陽光発電設置 「解体新書」・Q&A|東京都環境局 (tokyo.lg.jp)
義務化の対象はハウスメーカー?設置しなかった場合の罰則は?
上記内容を見ての通り、現状の制度での太陽光発電義務対象者はハウスメーカー等の事業者になります。川崎市は2000㎡以上を義務化対象を建築主としてますが、一般的な住宅で延床面積2000㎡以上となることは殆どないので、新築住宅への太陽光発電義務はハウスメーカーにがあると考えて問題ないでしょう。
ハウスメーカーは全ての新築住宅に太陽光を設置しないといけないのでしょうか?
そういう訳ではありません。建築される住宅の中には屋根面積が狭い、影の影響があるなどで太陽光設置に適していない物件もあります。こういった物件は設置義務化の対象外となります。また、導入対象の物件であっても、住宅購入者が何らかの理由でどうしても太陽光を付けたくない場合もあるでしょう。本制度で義務化対象とされた事業者は住宅購入者に対して、断熱・省エネ・再エネ等の環境性能について説明することが義務付けられています。住宅購入者は説明を聞いた上で注文等を判断することになりますので、設置しないという判断も認められるということになります。
罰則についてですが、設置義務者はハウスメーカーなので購入者が受けることは基本的にありません。またハウスメーカーに対しての罰則も特に定められていない状況です。しかし、まだ条例の制定段階のため罰則が規定される可能性もあります。
ハウスメーカーは何を義務付けられているの?
ハウスメーカー等の事業者は上でも記載した住宅購入者への説明義務に加えて、再エネ設置基準と呼ばれる地域毎に算出された発電設備設置容量を達成する義務が課されています。
再エネ設置基準の計算式は以下のようになります。
再エネ設置基準= ①設置可能棟数 × ②算定基準率 × ③棟当たり基準量
①設置可能棟数 ⇒太陽光発電が設置不可能な狭小住宅などを除いた、新築住宅棟数 【計算例】 ①500棟 × ②85% × ③2kW =再エネ設置基準850kW |
上記の計算例であればA社は500棟で850kWの太陽光設備を対象地域内で設置することを義務化されます。基準の達成に向けた住宅毎の発電設備容量はハウスメーカーが選択できるシステムとなっているため、5kW発電設備の住宅 × 170棟などでも基準達成となります。また、東京都では既存住宅への太陽光設置も上限を20%として再エネ設置基準への加算を認める救済措置を設けるなど、住宅購入者及びハウスメーカー等事業者の事情を考慮した義務化制度となっています。
参照元:太陽光発電設置 「解体新書」・Q&A|東京都環境局 (tokyo.lg.jp)
導入費用は?太陽光設置の経済的メリット
さて、ここまで読んで「太陽光って高いイメージあるし、設置しない選択ができるなら考えなくてもいいかな…」と思われた方もいると思います。確かに太陽光発電は安易に購入できる金額ではありません。しかし、太陽光発電はその初期費用を上回る様々なメリットがあります。主なメリットとして以下のようなことが挙げられます。
①経済的メリット 太陽光発電は発電した電気を自家消費することで電気代削減、余った電気を売ることで売電収益を得ることが可能です。東京都の設置義務化説明資料では4kWの発電設備を導入した場合の経済性計算の記載があります。計算の結果としては初期費用とランニングコスト(機器交換等)119万円に対して30年間で240万円もの経済効果があるというシミュレーション結果が出ています。東京都は蓄電池設置を条件とした補助金も出しているので、補助金の活用で初期費用を抑えれば、上記以上の経済効果が見込めそうです。 |
②非常時の電源確保 災害大国である日本において、災害時の対策は重要です。太陽光発電があれば停電した際の電力確保が可能です。スマホやテレビ、冷蔵庫などの家電が使えるようになるため生命線確保に有効的です。 |
③脱炭素化社会への貢献 太陽光発電はCO2削減に直結します。4kWの太陽光発電で1年間発電を行った場合のCO2削減量は杉の木約200本分の吸収量に相当します。 |
また、太陽光の導入方法も一括購入やローン組だけでなく、最近ではPPAモデルといった初期費用ゼロで太陽光を設置できるサービスもあります。PPAモデルの多くは10年から15年ほどの長期契約で、事業者が太陽光を無償で設置する代わりに、サービス利用者は発電した電気の一部を事業者へ提供・売電の権利等を事業者に提供などの対価を支払います。サービスを提供する企業と太陽光発電設備を共有する形になりますが、それでも十分な経済的効果が見込めます。また、契約期間満了後は太陽光発電を無償譲渡してもらえる点も魅力の一つです。
初期費用が高いからという理由だけで太陽光の導入を諦めてしまう必要はありません。導入検討時はハウスメーカ等事業者から様々な導入プランの提案があるかと思いますので、それぞれの特徴を比較したうえでご自身に合った導入プランを選択することが大切です。
参照元:太陽光発電設置 「解体新書」・Q&A|東京都環境局 (tokyo.lg.jp)
太陽光導入後にかかる費用
太陽光発電の導入後は点検・機材故障による交換といったランニングコストがかかります。PPAモデルによる導入の場合でも契約満了後はご自身で点検・交換作業を負担することになります。
●点検 ご自宅の太陽光設備が正常に発電しているかを確認する必要があります。導入時に発電量の計測装置等を取り付ければ、いつでも手軽に発電量の確認が取れるので安心です。機器の不具合や発電量の異変に気付いた際は業者による点検・修理作業が必要になります。 |
●機材故障 太陽光発電に必要な機材は大まかに太陽光パネル・パワーコンディショナー(パワコン)の2つで、あとはオプションとして蓄電池を設置するかです。太陽光パネルの寿命は20年~30年ほど言われているので、物理的衝撃等による破損は考えられますが、寿命での故障はそれほど心配する必要はないでしょう。交換が必要になるのはパワコンと蓄電池の方です。こちらの寿命はおおよそ10年~15年と言われています。ほとんどのメーカーで機器保証が10年もしくは15年付いているので、保証期間内は無償での修理対応となる場合もありますが、問題は保証期限が切れた後です。太陽光発電を数十年利用すると考えると、最低でも一度は交換が必要になるでしょう。 |
●パネル清掃 設置場所によっては太陽光パネルの清掃が必要な場合もあります。太陽光パネルは1年中屋外にさらされるため、パネルの表面が汚れてしまいます。大抵の汚れは雨で流されるため、発電量に影響することは少ないとされていますが、近隣に排気量の多い設備や雑木林等がある場合、雨ではなかなか落ちない排気ガスによる汚れや枯葉・花粉などが付着し、発電量を低下させてしまう可能性があります。パネル表面のセルが見えなくなってしまうほど汚れが付着してしまったときはパネル清掃の専門業者等に洗浄してもらいましょう。 |
●廃棄費用 太陽光パネルは産業廃棄物として適切な処理が必要なため、処分の際は産廃費用がかかります。 太陽光発電は2012年のFIT制度による売電が可能となった際に爆発的に普及しましたが、FIT制度の売電期間が最長20年となっているため、2032年ごろから太陽光パネルの大量廃棄時代が訪れるのではないかと危惧されています。太陽光パネルの廃棄量を減らすべく、今太陽光パネルのリユース・リサイクル事業の発展が期待されている状況です。太陽光パネルのリサイクル・リユースの発展は脱炭素にも廃棄コスト削減にも繋がります。リユースについては以前の記事【リユースパネルで「無電化地域を明るくしたい」 – 永輝商事 (eikishoji.com)】でお話していますので気になる方は併せて読んでみてください。 |
いずれも頻繁に必要なものではありませんが、導入後にかかるコストとして頭に置いておきましょう。
まとめ
今話題の太陽光発電義務化について書かせてもらいました。太陽光発電義務化はまだ始まったばかりです。今後、制度の内容が変わっていく可能性もありますが、国民がより前向きに検討ができる内容になっていくと思います。今後の太陽光義務化に関しての政府からの発表に期待です。
永輝商事ではカーボンニュートラル社会の実現に向けて自家消費型太陽光発電システムの導入に積極的に取り組んでおります。使用済みモジュールの買取、リユースパネルの販売等も行っております。太陽光発電関係のお悩みごと・ご相談があれば是非、永輝商事にお問い合わせください!お客様のニーズに寄り添った最適なご提案をさせて頂きます!