Scope3とは?企業のCO2排出の「見えない部分」
近年、カーボンニュートラルや脱炭素経営が企業にとって重要なテーマとなっています。その中でよく聞く「Scope1・Scope2・Scope3」という概念。特に「Scope3」が難しくてよく分からない……という人も多いのではないでしょうか?
本記事では、Scope3の基本から、その重要性、具体的な対策方法までを分かりやすく解説します。
Scope1・Scope2・Scope3の違いとは?

企業が排出するCO2(温室効果ガス)の量を測る際に、3つのカテゴリに分類するのが「Scope1・Scope2・Scope3」です。
- Scope1(直接排出):企業が自社で燃料を燃やしたり、工場や社用車から直接排出するCO2
- Scope2(間接排出):企業が購入した電力・熱・蒸気などの使用に伴うCO2排出
- Scope3(その他の間接排出):企業のサプライチェーン全体で発生するCO2排出

なぜScope3が難しいのか?
Scope1やScope2は、企業が直接管理できる排出量ですが、Scope3は企業のサプライチェーン全体に関わるため、データ収集や管理が非常に難しいのです。
例えば、自社で製造するための原材料の調達や、製品の輸送、さらには消費者が製品を使うときのエネルギー消費までがScope3に含まれます。
こうした間接的な排出量を正確に計算するのは、簡単ではありません。
Scope3が重要な理由

それでは、なぜScope3の排出量を削減することが重要なのでしょうか?
CO2排出の大部分を占める
多くの企業にとって、Scope3の排出量はScope1やScope2よりもはるかに大きな割合を占めます。特に製造業、小売業、物流業などでは、80%以上がScope3に該当することも珍しくありません。
サプライチェーン全体での責任が問われる
近年、投資家や消費者は企業のESG(環境・社会・ガバナンス)への取り組みを厳しくチェックしています。自社だけでなく、取引先やサプライチェーン全体の排出量に責任を持つことが求められています。
規制や開示義務の強化
国際的なルールとして、Scope3の開示義務が強化される動きがあります。例えば、欧州の「CSRD(企業持続可能性報告指令)」やアメリカの「SEC(証券取引委員会)」の新ルールでは、Scope3の報告が求められるケースが増えてきています。
Scope3のカテゴリー
Scope3は、以下の15のカテゴリーに分けられます。
- 購入した製品・サービス
- 資本財(機械・設備など)
- 燃料・エネルギー関連の活動
- 輸送・配送(上流)
- 事業から出る廃棄物
- 出張
- 通勤
- リース資産(上流)
- 輸送・配送(下流)
- 販売した製品の加工
- 販売した製品の使用
- 販売した製品の廃棄
- リース資産(下流)
- フランチャイズ
- 投資
企業はこのうち、自社の事業に関連するカテゴリーを選び、データを収集してCO2排出量を計算します。
Scope3削減のためにできること
サプライヤーと協力する
取引先と協力して、省エネや再生可能エネルギーの導入を進めることで、間接的なCO2排出を減らすことができます。
エコな製品設計をする
製品のライフサイクル全体でのCO2排出を考慮し、省エネ設計やリサイクル可能な素材を使うことで、Scope3を削減できます。
輸送手段を見直す
物流の最適化やEVトラックの導入、鉄道や船舶輸送の活用など、輸送時のCO2排出量を削減する方法もあります。
従業員の移動を見直す
リモートワークの推進や、エコな交通手段の導入(電車やEV車など)によって、従業員の通勤や出張に伴う排出を減らせます。
外部委託先、下請け、孫請けに求められること

Scope3の削減には、企業だけでなくサプライチェーン全体での協力が不可欠です。そのため、外部委託先や下請け、孫請けにも以下のような取り組みが求められます。
CO2排出データの提供
サプライチェーン全体での排出量を可視化するため、取引先企業も自社の排出量を計測し、報告する必要があります。
省エネ・再生可能エネルギーの導入
生産プロセスの効率化や、再生可能エネルギーの活用を進めることで、全体のCO2排出量を抑える努力が求められます。
環境基準の遵守
企業は取引先に対し、環境負荷を低減するための基準を設け、サプライヤーがそれを遵守することを求めるケースが増えています。
持続可能な物流の実施
輸送手段の見直しやカーボンフットプリントの削減を行い、環境負荷を低減する施策を取ることが求められます。
まとめ
Scope3は、自社だけでなくサプライチェーン全体に関わるため、データ収集や管理が難しい課題です。しかし、CO2排出量の大部分を占めるため、取り組む価値が大いにあります。
企業がScope3削減を進めることで、環境負荷を減らし、投資家や消費者からの評価を高め、将来的な規制にも対応できるようになります。
「Scope3って難しそう……」と思っていた方も、本記事を読んで少しは理解が深まったのではないでしょうか?まずはできることから一歩ずつ取り組んでいきましょう!