BCPの話になると、なぜエネルギー設備の話が先行するのか
BCP(事業継続計画)を考え始めると、
比較的早い段階で「エネルギー設備」の話題が出てきます。
- 太陽光を入れておけば安心なのでは
- 蓄電池があれば停電でも事業は続けられるのでは
- 非常用電源を整備することがBCP対策ではないのか
こうした話は、決して間違いではありません。ただし実務の現場では、
設備は入れたが、BCPとしては機能していない
というケースも少なくありません。
この記事では、BCP対策においてエネルギー設備が誤解されやすい理由を整理し、
話がズレやすいポイントを明確にします。
結論を出すことが目的ではなく、「どこから考えればよいのか」を揃えるための入口記事です。
よくある誤解|BCP対策=設備導入だと思ってしまう

BCPの議論で起きやすい誤解の一つが、
BCP対策とは、非常時に使える設備を用意すること
という認識です。
誤解① エネルギー設備を入れればBCP対策になる
太陽光、蓄電池、非常用発電機。
どれもBCPに関係する設備ですが、設備単体でBCPは成立しません。
BCPは「計画」であり、設備はその計画を支える手段の一つに過ぎません。
誤解② 停電=すべて止まる、という前提で考えてしまう
非常時でも、
- 全ての業務を続ける必要はない
- 全ての設備を動かす必要もない
にもかかわらず、「停電時=平常時と同じ電力が必要」
という前提で話が進むと、現実とズレます。
基本整理|BCPの本質は「何を止めないか」を決めること
BCPをエネルギーの観点で考える際、最初に整理すべき問いは次の一つです。
非常時に、何が止まると事業として致命的か
この問いに答えないまま設備検討に入ると、話は必ず迷走します。
BCPは「全部守る計画」ではない
BCPは、すべてを維持する計画ではありません。
- 重要な業務
- 優先度の高い設備
- 最低限維持すべき機能
を選び、段階的に守るための計画です。
エネルギー設備は、その「選別」の後に出てくる話です。
なぜエネルギー設備が“万能”に見えてしまうのか
BCPの議論でエネルギー設備が過大評価されやすい背景には、
いくつかの構造的な理由があります。
理由① 分かりやすい対策に見える
設備は「入れた・入れていない」が明確です。
計画や運用に比べて、成果が見えやすい。
そのため、「何か対策をした感」「説明しやすさ」から、
設備導入が先行しやすくなります。
理由② メディアや事例が“成功例”だけを切り取る
「この設備で非常時も事業継続できた」
という事例は目に入りやすい一方で、
- 実際にはどこまでしか守れなかったのか
- どの業務を切り捨てたのか
といった前提条件は、あまり語られません。
結果として、設備があれば何とかなるという印象が残ります。
業種・施設によって、BCPとエネルギーの関係は変わる

BCP対策は、業種や施設によって前提が大きく異なります。
例えば、
- 医療・介護施設
→ 電力が止まること自体が重大リスク - 製造業
→ 一部ラインだけでも動かせるかが重要 - オフィス業務
→ 通信・サーバーの確保が優先される場合が多い
この違いを無視して「BCPにはこの設備」
と一括りにすると、現場では使いにくくなります。
エネルギー設備は、業種・施設・業務内容とセットで考える必要がある分野です。
エネルギー設備は「BCPの答え」ではなく「選択肢」
ここまで整理すると、エネルギー設備の位置づけが少し変わって見えてきます。
- 太陽光はBCPの答えではない
- 蓄電池も万能ではない
- 非常用発電機も条件付きの選択肢
それぞれ、
- どの業務を
- どの時間帯に
- どの程度維持したいか
という前提があって、初めて意味を持ちます。
BCP対策とは、設備を選ぶことではなく、役割を割り当てることに近い作業です。
まとめ|BCP対策は「設備の話」をする前に決めることがある

BCP対策でエネルギー設備が誤解されやすいのは、
設備が悪いからではありません。
- 計画より設備が先に語られやすい
- 分かりやすい対策に見えてしまう
- 前提条件が省略されがち
こうした構造があるからです。
まず整理すべきは、
- 非常時に何を守るのか
- どこまで守れれば事業として成立するのか
- それを誰が、どう運用するのか
その上で、エネルギー設備を「手段の一つ」として検討する。
この順番を守るだけで、BCP対策の議論はかなり整理しやすくなります。