電力会社を変えると「全部変わる」ように感じてしまう理由
電力会社の切り替えを検討すると、多くの需要家が同じ不安を感じます。
- 停電しやすくならないか
- 電気の品質は落ちないか
- 何かあったときの対応は誰がするのか
- 「安い」代わりに、何かを失うのではないか
これらの不安の多くは、「何が変わって、何が変わらないのか」が整理されていないことから生まれます。
そこでこの記事では、新電力を含む電力会社切替について、需要家目線で「変わるもの」「変わらないもの」を切り分けてお伝えします。
まず結論!電力会社を切り替えても、すべてが変わるわけではない

電力会社を切り替えると、「確実に変わるもの」「原則として変わらないもの」がはっきり分かれています。
ここを最初に押さえておくことで、切替判断は一気に冷静になります。
電力会社を切り替えても「変わらない」こと
停電対応・復旧体制
電力会社(小売)を切り替えても、電気を実際に送っているのは一般送配電事業者です。
- 停電時の復旧
- 設備トラブル対応
- 系統の保守・点検
これらは、契約先の小売が変わっても変わりません。
電気の品質(電圧・周波数)
- 電圧
- 周波数
- 電気の安定性
といった「電気そのものの品質」も、送配電事業者が管理しています。
新電力だから電気が不安定になる、ということはありません。
電線・メーター・検針の仕組み
- 電線
- 電気メーター
- 検針の基本ルール
も、原則として同じです。需要家側で工事や設備変更が発生するケースは、通常の切替ではほとんどありません。
電力会社を切り替えると「変わる」こと

契約相手と契約条件
変わるのは、需要家が直接契約する「小売電気事業者」です。
それに伴い、
- 契約期間
- 解約条件
- 料金の考え方
が変わります。
電気料金の構成とリスクの持ち方
電力会社ごとに、
- 卸市場との連動度
- 固定価格の考え方
- 燃料費・調整費の扱い
は異なります。
同じ使用量でも、価格のブレ方・リスクの分担が変わる点は重要です。
再エネメニュー・環境価値の扱い
再エネ比率や環境価値の考え方は、小売電気事業者ごとに異なります。
- 再エネ電力の調達方法
- 非化石証書の扱い
- 表示方法の考え方
ここは「同じ再エネ」という言葉でも中身に差が出やすい部分です。
「変わる」と「変わらない」を混同すると起きやすい失敗
安さだけで選んでしまう
- 価格が安い理由
- その価格が続く前提
を確認しないまま切り替えると、後から「想定と違った」と感じやすくなります。
本来見るべきポイントを見落とす
- 誰がリスクを引き受けているのか
- 価格が変動したとき、どうなるのか
ここを理解しないまま比較すると、正しい判断ができません。
需要家が切替時に整理しておくべき視点
電力会社を切り替える際に、最低限整理しておきたいのは次の3点です。
- 変わらない前提(停電・品質・送配電)
- 変わる契約条件(料金・期間・リスク)
- 自社が許容できるリスクの範囲
これを整理したうえで比較すれば、切替は「賭け」ではなく「判断」になります。
電気料金に関わる「リスク」とは何を指しているのか

ここでいう「リスク」とは、停電や電気の品質といった供給リスクではありません。
(それらは送配電事業者が担っており、切替で変わりません)
需要家が意識すべきなのは、電気料金の決まり方に関するリスクです。
新電力に切り替えることで想定される主なリスク
需要家が新電力に切り替えた場合、「停電するのでは」「電気の品質が落ちるのでは」といった不安を持たれることがあります。
しかし、これらは前述のとおり、送配電事業者が担っているため、切替によって変わるものではありません。
新電力切替で需要家が向き合うことになるのは、電気そのもののリスクではなく、「契約と料金の仕組み」に関するリスクです。
整理すると、主に次の3つに分けて考えることができます。
電気料金が変動しやすくなるリスク
新電力の多くは、発電所を大量に保有しているわけではなく、卸電力市場から電気を調達する比率が高いという特徴があります。
そのため、契約内容によっては、
- 市場価格が高騰したとき
- 夏や冬などで需給が逼迫したとき
に、電気料金が想定以上に上昇する可能性があります。
これは「新電力だから不安定」という話ではありません。市場価格と連動する料金設計を選んだ場合の特性です。
言い換えると、
- 市場が安定しているときはコストメリットが出やすい
- 市場が荒れたときは影響を受けやすい
という、メリットと裏表の関係にあります。
重要なのは、価格が変動するかどうかではなく、どの程度の変動を想定した契約になっているかを理解しておくことです。
料金の仕組みが分かりにくくなるリスク
電力会社によって、料金の「考え方」や「組み立て方」は大きく異なります。
具体的には、
- 卸市場価格をどの程度・どのタイミングで料金に反映するのか
- 燃料費調整額に上限があるのか、ないのか
- 独自の調整項目や割引条件が含まれていないか
といった点が、会社ごとに違います。
多くの需要家は、
- 基本料金
- 電力量単価(◯円/kWh)
に目が行きがちですが、実際の請求額はそれだけでは決まりません。
その結果、
- 契約時のシミュレーションでは安く見えた
- 実際の請求額が想定と違った
というケースが起こりやすくなります。
これは、「高くなった」「だまされた」という問題ではなく、料金の仕組みを十分に理解しきれていなかったことによるズレです。
この意味で、これは価格そのもののリスクというより、「料金の見え方」に関するリスクと言えます。
事業継続性に関するリスク
新電力は「登録制」の事業であり、参入だけでなく、撤退や事業終了も制度上想定されています。実際に、市場価格の高騰や調達環境の変化によって、撤退する新電力が出ることもあります。
ただし、事業者が撤退した場合でも、
- 電気の供給が止まることはありません
- 需要家が突然電気を使えなくなることはありません
制度上、一時的に別の電力会社へ切り替わる仕組みが用意されています。
一方で、「契約条件が変わる」「選べる電力会社が一時的に限定される」といった、運用上の影響が
出る可能性はあります。
つまりここでのリスクは、「電気が使えなくなること」ではなく、契約の自由度や選択肢が一時的に変わる可能性です。
リスクは「有無」ではなく「どこに置くか」

ここまで見てきた3つのリスクは、新電力に限った特殊なものではありません。
重要なのは、
- 価格変動リスクを誰が引き受けるのか
- 小売事業者がどこまで負い、どこからを需要家が負うのか
というリスクの置き場所です。
固定価格で安定を取るのか、変動を許容してコストメリットを狙うのか。この選択そのものが、電力会社を切り替えるという判断の本質になります。
需要家としての整理ポイント
新電力への切替を検討する際は、
- 料金が変動する可能性はどの程度あるのか
- 変動した場合、自社としてどこまで許容できるのか
- 「安さ」と「安定性」のどちらを重視するのか
を、契約前に整理しておくことが重要です。
それができていれば、新電力切替は「不安な賭け」ではなく、納得した上での判断になります。
補足:よくある誤解
- 新電力=停電リスクが高い → 誤解
- 新電力=必ず料金が不安定 → 誤解
- 何も考えず安いところを選ぶ → リスクが顕在化しやすい
切替判断は「不安」ではなく「構造理解」から
電力会社を切り替えることは、特別な決断ではありません。
ただし、
- 何が変わって
- 何が変わらず
- どこを自分で選んでいるのか
を理解しないままでは、不安だけが先に立ちます。
