オフグリッドが「一部の特殊用途」ではなくなってきた理由
オフグリッドソーラーという言葉は、これまで「送電網がない地域向け」「発展途上国向け」といった限定的な文脈で語られることが多い分野でした。
しかし近年、日本と世界の両方で、オフグリッド型太陽光発電は防災・公共インフラ・エネルギー自立といった実務的な理由から、再評価されつつあります。
本記事では、
- 世界市場と日本市場の位置づけ
- どの用途で、なぜ伸びているのか
- 今後どのような視点で見ておくべきか
を、売り手の主張ではなく「検討者の思考整理」という立場で整理します。
よくある誤解:オフグリッドはニッチで小さな市場なのか

オフグリッド市場について、よくある誤解の一つが「規模が小さく、成長余地も限定的」という見方です。
確かに、メガソーラーや住宅用太陽光と比べれば、単体案件の規模は小さくなりがちです。ただし、市場全体で見ると話は変わります。
世界では、オフグリッドソーラー市場は今後10年で年率7〜10%程度の成長が複数の調査で予測されています。日本市場に限っても、全体の太陽光市場より高い成長率が見込まれている点は見逃せません。
重要なのは、「一件あたりの規模」ではなく、用途の広がりと継続需要です。
基本整理:オフグリッドソーラーとは何か
オフグリッドソーラーとは、電力会社の送電網に接続せず、太陽光パネルと蓄電池を組み合わせて電力を自給する仕組みです。
余剰電力を売電する前提はなく、発電した電気をその場で使い切る、もしくは蓄電池にためて使います。
この特徴から、
- 系統工事が困難・高コストな場所
- 停電リスクを避けたい用途
- 電力供給の信頼性を最優先したい設備 といった場面で選択されやすくなります。
世界市場でオフグリッドが伸びる背景
※ここで扱う数値は、複数の市場調査レポートで示されている一般的な予測レンジを整理したものです。実際の市場規模や成長率は、調査機関・定義・集計方法によって差が生じる点を前提に読み進めてください。
世界市場での成長を支えている要因は、大きく分けて三つあります。市場規模としては、世界のオフグリッドソーラー市場は2020年代前半で20億米ドル規模とされ、2030年代前半にかけて約2倍規模への拡大が見込まれています。
多くの調査で年平均成長率は7〜10%程度とされており、再生可能エネルギー分野の中でも比較的安定した成長分野と位置づけられています。
電力インフラ不足地域での実需
アフリカや南アジアでは、依然として送電網が十分に整備されていない地域が多く存在します。これらの地域では、中央集権型の電力網を待つより、分散型のオフグリッドソーラーの方が現実的な解決策となっています。
蓄電池コストの低下
蓄電池価格の低下は、オフグリッドの成立条件を大きく変えました。以前は「理論的には可能だが高価」という位置づけだったものが、現実的な選択肢に近づいています。
災害・非常時対応への関心
気候変動による災害頻発は、先進国においても「電力を自前で確保する」という考え方を後押ししています。これは新興国だけでなく、北米や欧州でも共通する流れです。
日本市場の特徴:なぜ成長率が高いのか

※日本市場に関する数値も、あくまで市場調査ベースの推計値です。制度改正や公共投資の動向によって前後する可能性がある点を踏まえて整理します。
日本のオフグリッド市場は、世界市場とは少し異なる特徴を持っています。市場規模自体は決して大きくありませんが、近年は年率10%前後と、国内太陽光市場全体を上回る成長が見込まれている点が特徴です。
公共インフラ・防災用途が中心
日本市場を語る上で、防災用途は特に重要な位置を占めています。
日本では、河川監視カメラ、街路灯、交差点設備、離島インフラなど、公共用途での導入が目立ちます。これらは「止まってはいけない電源」であり、停電時のリスク回避が重視されます。
特に防災分野では、
- 豪雨時の河川水位監視
- 土砂災害・雪害エリアでの常設監視
- 災害時に通信が途絶してはならない設備 といった用途が多く、平常時は目立たないが、非常時に確実に動く電源としてオフグリッドが選ばれています。
ここで重要なのは、オフグリッドが「非常用だけ」の設備ではない点です。日常的に稼働しながら、災害時にも切り替え不要で動き続けることが評価されており、結果として自治体・官庁案件での採用が増えています。
小型・中型システムが主流
日本市場では、数十ワットから数キロワット規模の比較的小さなシステムが中心です。大規模化よりも、設置のしやすさ、メンテナンス性、信頼性が重視される傾向があります。

電力コストとBCP意識の変化
日本では近年、電気料金の上昇や災害の多発を背景に、BCP(事業継続計画)の中で電源確保を数値で評価する動きが強まっています。
停電時間、復旧までの日数、代替電源の燃料確保といった条件を整理した結果、ディーゼル発電機単独では不十分と判断されるケースも増えています。
オフグリッドソーラーは、発電量そのものは限定的でも、
- 燃料補給が不要
- 長期停電でも最低限の機能を維持できる という点で、防災投資の一部として組み込まれやすくなっています。
電気料金の上昇や災害経験を背景に、企業・自治体ともにBCP(事業継続計画)を意識した電源確保を検討するケースが増えています。
実務的に見ておくべきポイント
オフグリッドソーラーを市場として見る際、単に「成長しているかどうか」だけで判断するのは危険です。
- どの用途が中心なのか
- 一度導入された後、更新・追加需要が生まれるか
- 法制度や認証がどう影響するか
といった点を分けて考える必要があります。
特に日本では、案件ごとに求められる要件が異なり、「標準品をそのまま売る」モデルが成立しにくい場面も少なくありません。
まとめ:市場は拡大しているが、見方が重要

日本と世界のオフグリッドソーラー市場は、数字上は着実な成長が見込まれています。ただし、その中身は一様ではありません。
- 世界では電力アクセスと分散電源
- 日本では防災・公共インフラ・信頼性
というように、求められる価値は地域ごとに異なります。
オフグリッド市場を検討する際は、「どこで」「誰の」「どんな課題を解決する電源なのか」という視点を持つことが、今後ますます重要になっていくと考えられます。