「一応つないでいる」になりがちな接地線
太陽光発電の設置工事において、接地線(アース)は必ず登場するものの、
- 図面どおりにつなぐだけ
- 法令上必要だから入れている
- 深く説明されないまま工事が終わる
こうした扱われ方をしているケースも少なくありません。
一方で、発電設備のトラブルや感電・機器故障の説明を追っていくと、接地の考え方が曖昧だったことが原因の一部になっているという場面も実務では見かけます。
この記事では、
- 接地線は「何のため」にあるのか
- なぜ重要と言われるのか
- どこで誤解が生まれやすいのか
を、売り文句ではなく、判断整理の視点で整理します。
よくある誤解|「感電防止のため」だけではない

接地線について最も多い説明は、
万が一の感電防止のため
というものです。
これは間違いではありませんが、それだけだと役割の半分も伝わっていません。
太陽光発電設備における接地の役割は、大きく分けて次のように整理できます。
- 人への影響を抑える
- 機器への影響を抑える
- 異常を“逃がす・分かる状態”をつくる
つまり、安全装置というより「異常時の受け皿」という性格を持っています。
基本整理|接地線は何をしているのか
中学生にも伝わる言葉で整理すると、接地線の役割はとてもシンプルです。
電気の「行き場」をつくる
太陽光発電システムでは、
- パネル
- パワーコンディショナ
- 配線
- 架台(金属部)
と、電気が流れ得る場所が多数あります。
何らかの理由で、「絶縁が劣化した」「配線が傷ついた」「雷やサージの影響を受けた」といった状態になると、本来流れるべきでないところに電気が現れることがあります。
そのとき、
- 接地がない
- 接地が不十分
だと、電気は人や機器を通って逃げようとする可能性があります。
接地線は、「そこを通って地面に逃げていい」という安全な逃げ道を先に用意しておくものです。
実務的な注意点①|「つながっている」だけでは意味が薄い
設置工事では、「接地線は引いてある」「規定の箇所に接続している」という状態でも、実際の効果はケースによって差が出ます。
例えば、
- 接地抵抗値の管理が曖昧
- 接地極の設置環境が適していない
- 複数設備で接地の考え方が揃っていない
といった場合、「形式的には接地しているが、期待した働きをしない」という状況も起こり得ます。
ここは施工品質・設計思想が表れやすい部分でもあります。
実務的な注意点②|雷対策と接地を混同しない
もう一つよくある混乱が、「接地=雷対策」という考え方です。
実際には、
- 接地は“逃げ道”をつくるもの
- 雷・サージ対策は“侵入を抑える・分散させる”考え方
と、役割が少し異なります。
接地をしていれば、雷被害が完全に防げるわけではありません。
ただし、
- 接地が不十分だと被害が拡大しやすい
- 異常電圧が機器内部に残りやすい
という傾向はあります。このあたりを一色単に説明してしまうと、期待と現実のズレが生まれやすくなります。
ケース別整理|接地線が意味を持つ場面

ケース① 金属架台を使用する場合
架台に電位が乗る可能性があるため、人が触れる前提での安全確保という意味合いが強くなります。
ケース② パワーコンディショナ周辺
内部異常や劣化時に、機器を守る・異常を外に逃がす役割が中心になります。
ケース③ 長期運用を前提とする設備
経年劣化・想定外の事象を考えると、接地は「今」より「将来」に効いてくる要素です。
まとめ|接地線は「見えない保険」に近い存在
太陽光発電設置工事における接地線は、
- 発電量を増やすものではない
- 目に見える効果が分かりにくい
- 問題が起きなければ話題にならない
という意味で、軽視されやすい要素です。
ただし、「事故」「機器故障」「原因不明のトラブル」が起きたとき、後から重要性が浮かび上がる部分でもあります。
接地線は「コスト削減の対象」ではなく、リスクの考え方をどう整理するかの問題。そう捉えておくと、
設計・施工・説明の精度が一段上がります。